嶋川センセの知っ得社会科ー女性のためのお仕事相談室ー

女性が働き続ける上での様々な情報を提供し、また仕事上の様々な問題を共に考えます。

2007年04月

労働者派遣法のなんでもあり〜な、びっくり解釈

ゴールデンウィークが始まりました。

成田空港で「9連休」です。「8日間の予定でイタリアへ行きます」と話している人を放送していました。

 

一方、六本木ヒルズのエレベーターでワイヤーの磨耗が見つかり、そのずさんな検査をした日本オーチスエレベーターが国土交通省の指導で全国6000基のエレベーターを点検すると報道されています。これもテレビで点検している様子が報道されていました。人生いろいろと言った総理大臣がいましたが、この場合もそう発言するでしょうか。

 

私はむしろこの点検をしている人の雇用形態が気になって仕方ありません。デパートでも、宅急便を受け取るときも、テレビを見ていても、はて正社員だろうか、有期雇用だろうか、請負だろうか、派遣だろうかとか、その人に聞いてみたくて口がむずむずしてきます。派遣といえば、こんな記事を見つけました。

 

《日立製作所の工場で、派遣社員から契約社員に切り替えて直接雇った人の労務管理を、それまでと同じ派遣会社にほぼ丸投げしていたことが分かった。賃金など労働条件も同じままで、3月末で契約は打ち切られた。契約社員らは「実態は派遣と同じ。『偽装直接雇用』だ」と反発。派遣社員に直接雇用を申し込むことを企業に義務づけた労働者派遣法の規定が無意味になりかねないとして、法の不十分さを指摘する声も出ている。〜中略〜同社の東京・青梅工場では056月2つの派遣会社から計130人に派遣社員を受け入れ、うち110人を、法定の派遣期間がすぎる066月から契約社員に切り替えた。しかし、賃金も労働条件も派遣時代と同じで、タイムカードの管理や教育訓練などを、同じ派遣会社が業務委託の形で引き続き担当。派遣会社の寮に住み続け、寮費は日立が賃金から天引きして派遣会社に渡していた。〜中略〜厚労省は「派遣法が規定するのは直接雇用を申し込む義務。契約社員にしたり労務管理を業務委託しても違法とはいえない」という。》(朝日2007429)

 

厚労省の見解はめちゃくちゃとしか言いようがない。

 

派遣で3年以上働けば、その派遣先の会社は直接雇用の義務を負うということは今まで何度も書きました。誰だって、直接雇用と聞けば「正社員」と思いますし、そのポストで3年働いたということは、そのポストに人が恒常的に必要であるということですよね。

 

派遣3年→直接雇用の契約社員、これでは労働者派遣法の直接雇用の義務はあってもなくても同じということです。この日立の場合、派遣と直接雇用の契約社員と何が違うのでしょうか。いつもいつも次回の契約更新を心配しながら働らかなければならない。

法律はざる法であり、強い者の好き勝手な解釈を許し、企業側に立つ政府です。

 

注:労働者派遣法の直接雇用の義務は、派遣期間が途中で変わっていますので、一度アクセスしてじっくり読んでください。YAHOO→労働者派遣法→2改正労働者派遣法の概要。

 

今日は、改正均等法の具体例か、もしくは労働契約法について書くつもりでしたが、小さく載っていた記事の、内容の重大さに変更しました。

最近、一回のブログが長すぎるという指摘をいただきますので、今日はここまで。続きを読むもよろしく。

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パート労働法の問題点ー衆議院から参議院へ

おっ、画期的な更新のはやさ。(自画自賛。問題は内容なのですけどね)

 

パート労働法の改正案が、419日に衆議院を自民・公明の圧倒的多数で原案通り可決され、参議院へ送られました。共産党の修正案は、共産と社民が賛成しましたが少数なので否決され、民主党は対案を出したけれど、国会運営上の理由で採決は行われませんでした。

(国会運営上の理由って何でしょう)

 

このパート労働法は、今年4月から施行されている改正均等法の附帯決議に次のような文言があって、それにも基づいて審議されているものです。

 

府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。パートタイム労働者が意欲を持ってその有する能力を十分発揮できるようにするため、正社員との均衡処遇に関する法制化を進めること。

 

410日の衆議院で参考人として発言した中原さんの陳述を18分だけなので、見てください。非正規労働者の代弁をしています。

 

YAHOO→衆議院→衆議院インターネット審議中継→厚生労働省→左のカレンダー410日をクリック→中原純子(参考人全国一般東京労働組合執行委員)をクリック。

 

彼女が述べているように、改正パート労働法は欠陥だらけ。何のために法改正をするのか分からない案です。

次にその問題点をまとめます。

 

中原さんの職場の同僚が「パート労働法が改正になって、これでパートの私たちの待遇もよくなるね」と言ったとか。とんでもない。以前から書いているように、このパート法が成立して救われるのはパート労働者のたった1%だけなのです。

 

その1%とは次のような人です。

1正社員と同じ仕事内容。

2正社員並みの配置転換がある。

3期間の定めのない雇用。

 

上記3点で、疑問のある人手を挙げて。

(なつかしいね。学生時代に自ら手を挙げて積極的に発言したことありましたか?考えてみればこういうチャンスって学校だけのような気がしますね。社会人になったら周りを見てしまって素直に発言しなくなったではありませんか?)

 

私は3つとも引っかかるけど、「なんのこと」と思ったのは3番目。パートで期間の定めのない人っているのでしょうか。これって永久にパートということ?これはもう立派な正社員でしょう。ということで、衆議院厚生労働委員会でも質問があったそうです。Aは柳沢大臣です。

 

Q「有期契約を何度更新したら『期間の定めのない雇用』になるのか」

A「様々な事情を考慮して判断する。回数を示すことはできない」

(このブログにも度々登場いただいている名古屋銀行の坂さんは、1年契約を28回更新しています。回数を示さないのなら、3番目は『絵に描いた餅』ですね。)

 

知ってましたか。このパート労働法が当てはまる人は、フルタイムのパート以外の人です。正社員よりも勤務時間が短くないと該当しません。正社員と同じか、それ以上働いているフルタイムパートは1,031,000人いますが、この人たちを救う法律はありません。(厚労省03年調査)

 

上記の坂さんは、正社員よりも一日に2時間15分短いので、1番目は該当します。でも、この1番目と正社員よりも短い労働時間って、矛盾しませんか。短いから正社員と同じ仕事内容ではないと経営者が言いかねません。国会で参考人として発言した中原さんは、1年契約を14回しているそうです。

 

坂さんは「仕事も責任も同等」と言っていますが、当の銀行は「職務が正社員と同等がどうかは本人と会社で意見が分かれる場合もある」と言っています。

 

この法律が成立したら、「正社員と同じ仕事」が何を指すのかは、厚労省が「例示」するそうですが、これには強制力がありません。上記の3条件に当てはまるパートがいる会社で、正社員にしたくないので、3条件から外すような動きをすでにしているところもあるようです。

 

先進国のなかで、いまだにこんな程度のパート労働法しか提案できないのです。中小企業の経営が苦しいことは度々ニュースで見ますが、巨視的にみれば、富がどこかに偏っているということでしょう。アメリカでは、労働者の取り分1に対して経営者は400だそうです。1ヵ月20万円の賃金なら8000万円の経営者の取り分ということになります。日本が目指しているのは、このアメリカ型です。

 

今日のブログの内容は、主に朝日新聞(4月14日、420日、均等待遇アクション21)から引用しました。次回は前回に引き続き均等法の具体的な学習をします。

では今日はここまで。

続きを読むもよろしく。

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改正均等法の具体的事例の学習会その1

またまた長い間更新できませんでした。世話のかかった小さい人が帰りましたので、ようやく自分の時間を確保できました。

 

さて、前回のブログで書きましたように、4月1日から改正均等法が施行されました。あなたの職場で何か変化はありましたか。職場研修はなされたでしょうか。今回の改正では男女ともが対象になったのですから、会社あげて周知を図るのが本筋です。何ら変化無し、または変化あり、どんなささいなことでもいいですから、コメントしてください。多くの女性の怨念と希望の結果の、不十分ながらの均等法です。これを使ってこそ、次の改正へとつなげることができます。私も早速均等室へパンフレットをもらいに行くことにします。

 

さて、今パート労働法が国会で審議されています。これもまったくの骨抜き法で、同一価値労働、同一賃金という建前を適用されるのはたったの1%の非正規雇用の人だといわれています。院内集会が4月に2回持たれますが、残念ながら私はどうしても外せない用があって参加できません。だから院内集会で多分語られたであろう、非正規労働者の赤裸々な実態をこのブログで書くことができません。何とか資料は手に入れたいと思ってはいますが…

 

さて今回のブログから改正均等法が、どのようなケースに該当していくのかを何回かに分けて書いていくつもりです。勿論このような難しい法解釈は、本を読んでの受け売りなので、著作権で訴えられるかもしれませんね。参考にしたのは新聞、男女雇用機会均等法Q&A(日本弁護士連合会編岩波ブックレット)、均等室パンフレットです。

 

第1問:派遣社員が妊娠したことが判明。育児休業を取得することができるか。(言い換えれば元の職場に復帰できるか)

 

A:このケースは2つの問題を提起しています。まず派遣であること。もう一つが育児休業を取得できるかということです。

答えは派遣であっても育児休業を取得できます

 

まず育児休業を取得できる根拠となるのは改正均等法第9条です。均等法は有期雇用の人にも適用されます。

 

9条の「不利益取扱い」には、期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないことや、予め明示されていた、例えば更新3回までという約束が、妊娠したことが分かったら2回になったことや、契約期間終了による「雇い止め」も含まれます。

 

また均等法の事業主には、派遣労働者の雇い主である派遣元だけでなく、派遣先も含まれます。(労働者派遣法47条の2)

 

だから派遣先が派遣元に対して、妊娠している女性の派遣は受け入れられないとしたり、他の人に替えるように要求したりできません。

 

正社員も退職勧奨やパートへの変更などのすべての不利益取扱いが禁止されています。

 

では抽象的だけど均等法を読んでみてください。私も入力しながら改めて読んでみました。9条3項に労働基準法第65条が出てきますので、これも末尾に付けておきます。また4項で、もし事業主が解雇した場合は、事業主が解雇の理由を証明しなければならなくしました。今まで裁判例をいくつかブログに書いてきましたが、いつも不利益を受けた側が証明しなければならなかったことから考えると、この条文はなかなかのものですね。

 

《雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律》

(婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)

9条 事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。

2 事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。

3 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第65条第1項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第2項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であって

厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他の不利益な取扱いをしてはならない。

4 妊娠中の女性労働者及び出産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りではない。

 

3項のその他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものは以下の通りです。これらの理由で事業主が解雇したり不利益な取扱いをすることを禁止しました。

 

《厚労省令で定めるもの》

妊娠したこと。

出産したこと。

母性健康管理措置を求め、またはその措置を受けたこと。

(母性健康管理措置を書くと文が長くなるので検索してみてください。)

坑内労働や危険有害業務の就業制限を受けたこと。

産前産後休業を休業したこと。

軽易な業務への転換を請求したり、転換したこと。

妊産婦に関する時間外・休日・深夜業の制限を要求したり、それを受けたこと。

育児時間を請求したり、取得したこと。

妊娠又は出産に起因する症状(つわり、切迫流産、出産後の回復不全など)により労働が提供できないこと、または労働能率が低下したこと。

 

陰の声:「現実には、職場でこんなこと主張できないし、職場での自分の立場や人間関係が悪くなってしまう。」

 

法律があってもそれが守られないのが常です。法律が形骸化するのには2通りあります。知っているけれど行使しないか、知らないかです。

法律があって、その通りになっているのならとっくに男女平等は確立されているでしょうからね。

 

後はその人の勇気と行動にかかっています

 

方法はともに考えましょう。まずは私にコメントをください。何度も書いていますように、私のメールに直接入ってきますから、「公表しないで」と書いてくれればコメントは公表されません。またはこのブログにリンクしてあるACW2に相談してもいいですね。

では今日はここまで。続きを読むもよろしく。

 

(先日卒業生に出会いました。彼女曰く「先生のブログ、涙なくしては読めないわ」「えっ、そんなに感動してくれたん」「続きを読むの中国残留婦人、気の毒やわ」。彼女が涙するほど女性労働問題で迫らねば)

 

労働基準法

(産前産後)

65  使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあつては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。

 使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。

 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。

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キャノン・アステラス・兼松

長い間更新できませんでした。こんなに更新できなかったのは、小さな人が私の家にしばらく滞在して、その世話に追われて思考停止状態に陥ったからです。

さて今日のブログは3点です。

 

一つ目は、《キャノン1000人正社員化》です。(朝日2007326)

《キャノングループ各社の工場で働く非正規雇用の労働者のうち千人を08年末までに正社員に登用する方針を明らかにした。〜中略〜キャノンは昨夏、実態は派遣なのに形式的に請負を装う違法な「偽装請負」が表面化。これをきっかけに派遣や請負の労働者から数百人を正社員にする方針を明らかにした。ところが今年2月、これを先送りする意向を表明。今国会ではキャノンの偽装請負に批判が集中した。今回の方針表明は、そうした批判に配慮した格好だ。キャノンのグループ各社の国内工場で働く派遣・請負労働者は昨年暮れの時点で2万人余。このうち主に派遣労働者(13000)から期間工(最長211ヶ月)として2500人、正社員として1000人を直接雇用する。これ以後も正社員の登用を進め、職場における正社員の比率を高める。》

 

さて、私の感想と疑問は2つ。

キャノングループで働く非正規雇用労働者は2万余り。その中の1000人、宝くじ並みか?

どういう基準で選ばれた人が正社員になるのでしょうか。今年1年の取り組みをマスコミはきちんと報道してほしいですね。

期間工の最長211ヶ月の根拠は何でしょうか?

211ヶ月経てばその現場の仕事は完了するのでしょうか。

まさか、労働者派遣法では、製造現場で働く人の最長期間が3年で、3年以上働いていれば正規雇用の義務を企業が負うから、それとの整合性からこの期間にしたのでしょうか。それとももっと他の理由があるにかも。

(注:3年は200731日から、200431日以降2007228日までは1年間、それ以前は製造現場への派遣労働は認められていなかった。)

 

2つ目は《アステラス社員「性差別で昇格遅れ」2500万円支払い和解 大阪地裁》です。(朝日2007328)

詳しくはこのブログの「裁判傍聴記」20061227日を見てください。

 

《アステラス製薬社員の仙頭さんが『男女差別を受けて昇格・昇給が遅れた』として、同学歴の男性社員らとの15年分の給与差に当たる総額5500万円の支払いを求めた訴訟が和解した。同社が和解金2500万円を支払い、和解条項に社内で男女差別が生じないよう努めるとした文章を盛り込むことで合意した。》

 

疑問点は、傍聴記にも書きましたが仙頭さんが成績優秀にもかかわらず差別を受けたのは明白。

2500万円の根拠は何なのでしょうか?

 

判決で請求額満額とか、それ以上の額が示されたのはまず見たことがありませんね。だいたいは値切られています。

 

仙頭さんのケースは、和解でなく判決を求めても勝利したでしょう。しかしそれには最高裁まで覚悟しなければなりません。日本の裁判は実に長い月日がかかります。仙頭さんは現在55歳、最高裁の判決が出ても、そのときは退職していたというのでは昇格を実現することはできません。

 

3つ目は、総合商社兼松の東京高裁の結審が3月27日にありました。判決はしばらく時間がかかるようです。

 

この裁判の概略をまず読んでください。

 

《兼松の女性労働者6人が、コース別処遇制度によって、男性に比べて低い賃金に抑えられてきたのは男女差別であり違法であるとして、同社を相手に同年同期入社男性社員との賃金差額など、計約3億2千万円の支払いを求めて19959月に提訴。兼松が同制度を実施したのは19851月。男女別だった賃金体系を「コース別」に再編。男性を全員「一般職」、女性を全員「事務職」に振り分け、「一般職は基幹的業務、事務職は補助的業務」とし、男女別の賃金体系を維持。「コース別人事制度」で男女の賃金格差はむしろ拡大し、女性たちの努力で実現した22歳の男女同一初任給も崩されてしまった。定年まで勤めても、女性の賃金は男性27歳の賃金を超えることがなく、6人の原告の女性たちの同時期入社男性社員との賃金格差は、1人あたり約2300万円から6300万円にのぼる。

仕事の内容は男女区別なく、総合商社の業務は、契約を結ぶ仕事、受注・発注、配送手配、クレーム処理、支払い、代金回収と多岐にわたる。契約を結ぶのは男性社員が多いとはいえ、ほとんどの分野で男女の区別なく仕事をしている。会社側は、「事務職」は転勤がない。「一般職」は転勤がある。賃金に差があるのは当然と主張たが、副社長を務めた男性も含め、一般職社員でも一度も転勤しないまま昇給昇格していく社員も珍しくないことを原告が示した。》

 

東京地裁の判決(200311月。ここまでに8年経過)は残念ながら原告の敗訴でした。

裁判長は、「兼松で導入された『コース別人事制度』については、男女雇用機会均等法(旧均等法)をのがれて男女別賃金制度を維持するためのものと認めながらも、『旧均等法は男女差別の禁止を努力義務としていたから、違法とまではいえない』と会社側の主張を容認。

 

そして裁判は東京高裁へと移りました。その結審が327日にあったわけです。中野麻美弁護士(『労働ダンピング』の著者 岩波新書)の意見陳述が素晴らしいので、以下に紹介します。少し長くて、難解だけれど、働く女性の状況、思いをはっきりと主張しています。

 

意見陳述      

原判決は、本件賃金格差が女性に対する差別によって生じたことを認めている。この差別によってもたらされた格差は、女性の賃金がどれだけ勤務を重ねても27歳から26歳の男性の賃金を下回る水準に過ぎないことに象徴されるように、女性の働き手としての人格的価値を貶めるものであった。しかも、この格差は年を追うごとに拡大しており、長期にわたって働き続けてきた控訴人らにとって、越えることのできない男性の賃金年齢は、年を追うごとに低年齢化してきた。控訴人らは、生きていく経済的な基盤を差別によって否定されるという賃金差別によって、何にも耐えがたい屈辱を強いられてきた。

そして、この差別は、年金にも反映するという点で女性が生涯にわたって受けることになるという、生きる基盤における差別でもある。原判決は、控訴人らが採用されてから90年代に至る過去の違法ではない差別ゆえに今日に至る差別も違法ではないとするものであるが、これは、1997年以前に就職しなければならないような年代に女性として生まれた以上、差別を受入るよう宣言するに等しく、将来にわたって差別による不利益を耐え忍ぶことを強いるものである。

会社は差別意図などない、格差は解消しているとして、社員の人員構成を示してみせているが、これがいかに事実を歪曲する主張立証であるかは、比較する母集団の恣意的な設定や事務職には女性しかいないこと、しかも均等法以前に入社して長年勤務を継続してきた女性はほとんど事務職に塩漬けされていることをみても明白である。

 

差別は法的にも人間としての尊厳を否定するものであるとされているが、これは単なる机上の理論ではなく、差別がフラストレーションや心理的葛藤を高めるものであること、行動や思考の自由を抑制し、自己評価を低め、人間としての当たり前の自信や誇り、生まれてきてよかったと思えるような自己肯定観を奪うものであることは社会共通の認識になっている。被控訴人会社が行ってきた賃金差別は、そうした性質を有するものであり、しかも被控訴人会社は、この差別を合理的なものであるとする弁解のために、控訴人らの仕事を「単なる補助」「取次ぎ」「インプット」に過ぎないものであるとして法廷における主張立証においてさらにその差別を上塗りした。このような訴訟態度こそ、糾弾されなければならない。

 

企業の効率的運営と当時の一般的な女性の就業実態という生の事実を根拠に男女差別を違法ではないとした原判決は、きわめて不当なものであり、わが国はもちろん、広く国際社会においても容認されるべきではない。原判決には、そもそも社会において追及しなければならない法的規範、社会的価値、そして経済社会において承認されるべき倫理が忘れられている。

政治哲学や経済倫理学の基礎を築いたロールズは、すべての人々に対して「自尊」または「自尊の社会的基礎」が配分されなければならないとしている。この自尊とは、自分には価値があるという感覚、自分が善いと考えることや人生についての自分の意志は実行するに値するという確信を意味するものであって、ロールズはこれを「最も重要な基本財」であるとした。働き手であるすべての人々にとって、自分の労働が公正に認められること、自分が役に立っているという確信を必要としているのであり、それは経済社会における公序を構成するというべきである。

公序を原判決のように裸の事実によって判断するのであれば、差別が強固なほど違法ではないという矛盾を犯すことになってしまうが、このようなことを法が容認できるものではない。

 

本件は、女性であるがゆえの低い賃金と、女性であるがゆえに労働に対して加えられた「補助の烙印」という明白な差別の違法性を、偽装されたコース制によって隠蔽しようとしたというものである。そして、労働関係の実態を前提にすれば本件コース制度が偽装されたものであることは明白である。既に国際社会においては隠れた差別を可視化して排除する制度を確立していた1980年代に、控訴人らが受けてきた可視化された明白な差別さえ違法と断罪できないとした原判決の誤りは明白である。女性差別撤廃の流れに棹差す判決を切に要望する次第である。

 

胸に迫ることばがいくつも出てきます。

高裁で、原告が負けるようなことがあったら、日本の労働者の人権はお先真っ暗といえますね。

では今日はここまで。

電話相談4日までです。「続きを読む」もよろしく。

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