嶋川センセの知っ得社会科ー女性のためのお仕事相談室ー

女性が働き続ける上での様々な情報を提供し、また仕事上の様々な問題を共に考えます。

2008年03月

悩める卒業生のその後2&兼松原告が暴く転勤という企業の常套句

今回のブログは、前回報告した、悩める卒業生が正社員になったことの続きです。

 

彼女が、3児の母で、正規と非正規の境界線の年齢35歳を少々超過していたにも関わらず、正社員になることができたのは、彼女が優秀だったからは当然のことですが、それ以上に、何よりもラッキーであった、というのが私の正直な感想です。それくらいに、これは奇跡としかいいようがないほどのことなのです。奇跡は彼女にとってはラッキーでしたが、雇用される側から言えば、困ったことです。奇跡は、雇用が不透明で一貫性に欠ける事の同意語でもあるからです。

 

彼女が面接に行ったときから報告を受けていました。

面接のときに、確か「中途採用(年齢のこと)は前例がないから、あなたは嘱託から始めてもらいます。」と言われたと記憶しています。

「『何年嘱託を続ければ、正社員になれますか』と聞いたか?」と私。

「よう聞かんかった」と彼女。

この会話の記憶があるので、悩める卒業生からのコメントやメールで、正社員が帰った後も、嘱託の彼女が働いていたこと、また正社員である前任者が何年もほっておいた沢山の書類の分類と綴じ込みを3ヶ月間、来る日も来る日もやり続けたこと等を知っていました。だから彼女が正社員化を要求したとき、決してそれが無謀な要求ではないと彼女に言いました。

 

彼女の要求に対して、会社の最初の回答は、「転勤できますか」「残業できますか」というものでした。この段階で彼女は怖気づきました。

「残業できますか」に対しては、彼女の父上の言葉「社員になったら、お先です〜って、帰れば良いやんか。残業しないからって、クビにはできひん」に勇気をもらい、出たとこ勝負と気持ちを固めました。

残るは「転勤」。彼女が今いる部署で、嘱託にも関わらず、ずっと残業をし続けていたことは彼女からのコメントで分かります。ということは、この部署は人手不足なのです。もし正社員になった途端、転勤となればこれは明らかに「いやがらせ」と考えられます。そのときは、個人参加のユニオンに入って闘うと、これも最後は腹をくくったようです。

 

手前味噌ですが、彼女がこのブログを読んでくれている一人であること、ブログによって、闘っている女性が全国にいることを知ったこと、陰ながら私も労働問題に詳しい友人からの情報を提供したことが、彼女の行動を後押ししました。家族で引越しするほどの転勤は無いはずです。片道30分くらいはあるかもね。

 

当初、会社側は「正社員になりたいのなら、転勤は覚悟しいや」と言いま

したが、この転勤に関して、兼松裁判の原告が出した資料がありますので、紹介します。こういうことも知っていれば、「転勤」の言葉に怖気付くことは少しは軽減されるかもしれません。

 

東京地裁での兼松の原告の申し立てに対して、東京地裁は次のように述べている。

「転勤によって形成される知識・経験・業務処理能力は異なるから、転勤を予定するかどうかが男女間の業務知識や業務処理能力の格差を決定付ける。」

 

これに対して、兼松の原告側は、次のように反論する。

「地裁の判決を裏付ける事実及び根拠を何も示していない。一般的に、日本の企業において、男性社員を対象にローテーションとして転勤を経験させて管理職に登用するというキャリア形成が企画され、それが、日本の女性労働に低い賃金などの待遇を余儀なくさせてきたことは事実である。しかし、職務の実態はこれと全く異なり、男女で異なるものではなかった。特に総合商社においては、担当商品や貿易実務に関する専門性を深めることを旨とし、適材適所の観点から転勤の必要があればこれを実施するというものであって、日本型雇用の特徴として指摘されてきた人事ローテーションによるキャリア形成とは全く異なるものであった。総合商社において、転勤がなければ熟練が形成できない業務分野も存在はするが、そうした分野は限られている。」「兼松においても、転勤のないまま定年を迎える社員は少なくなく、職掌別制度を導入する以前には相当数の男性社員が転勤をしていなかった。」

 

話しを元に戻して、悩める卒業生のように、「正社員になりたいのなら転勤も覚悟を」の一言を言われたなら、その会社でどれくらいの割合の人が転勤しているのかの資料を示すよう、会社側に迫りましょう。東京地裁と同じ様に、単なる思い込みだけのことも多々のような気がします。

 

冒頭に、彼女はラッキーだったと書きましたが、最終的に彼女を正社員に採用したこの会社は、規模的に一人ひとりの従業員との距離の近い会社であったことが最大の勝因だと思います。彼女の真面目さ、能力の高さをきちんと評価するだけの上司がいたこと、その上司の判断が決定権に繋がる組織の会社であったこと等も含めて、彼女にはラッキーな就職先でした。嘱託から正社員へ、今後職場において、どのような変化があるのか、また彼女に報告してもらいましょう。ともあれ、41日、若い社員と一緒に入社式を迎える彼女に、心からの祝福を送ります

(たかが正社員になっただけなのに、この喜びようが、今の日本の労働者の状況をよく表しています。)

では今日はここまで

改正パート労働法(1)&悩める卒業生のその後(1)

200841日から「改正パート労働法」が施行されます。

名古屋銀行で28年間パート労働者として働く女性が、今回の改正パート労働法を根拠に、正行員化を求めました。銀行側との団体交渉の様子を昨年、何度かにわたり、このブログに載せました。(詳しくは昨年4月23日、6月20日、7月1日、7月30日参照してください)。

 

先日、この、改正パート労働法の学習会がありましたので、今日はその報告から始めます。

結論から言えば、個人で使うにはハードルが高すぎるという感想をさらに強くしました。

 

講師は弁護士の平方かおるさんでした。学習会のレジュメと厚生労働省が発行している「パートタイム労働法が変わります」から一部引用して、説明していきます。

≪「短時間労働者の雇用管理の改善に関する法律」改正の6つのポイント≫

パートタイムを4つの類型に分けてそれぞれに応じた待遇を保障することとしたこと。

労働条件明示義務を努力義務から罰則を科して強制する義務としたこと。

通常の労働者への転換を推進するための義務を定めたこと。

待遇の決定に当たって考慮した事項の説明義務を定めたこと。

苦情の自主解決のための手段、方法を定め、自主的解決を行うことを努力義務として定めたこと。

都道府県労働局長による紛争解決援助義務を課し、また調停による解決も予定したこと。

と、これら6点がポイントなんだそうです。

 

パートタイムを4つの類型に分けるという点に関して、ではあなたはどこに該当するか考えてみてください。

その前に確認。

この改正パート労働法に該当するのは、その会社で通常働いている労働者の労働時間よりも短い人が該当します。フルタイムパート(完全に日本人の間でしか通用しないヘンは概念)には、この法は適用されないのですが、「適用されないが、類推適用される」のだそうで、フルタイムパートの人も参加してください。(法律の解釈はややこしいですね)

 

まず5つ(A〜E)の条件があります。これがいくつ当てはまるかで、類型できます。

5つの条件。

A:通常の労働者より1週間の所定労働時間が短い。

B:通常の労働者と、業務の内容及び責任の程度が(職務の内容)が同一。

C:通常の労働者と、一定期間、人材活用の仕組みや運用などが同じ。

D:通常の労働者と、雇用終了までの全期間、人材活用の仕組みや運用などが同じ。

E:無期契約(これと同視すべき有期契約を含む)

 

第一類型=A

第二類型=A・B

第三類型=A・B・C

第四類型=A・B・D・E

 

あなたの類型が分かりましたか?

 

では次に、類型に応じた待遇を確認してみましょう。

賃金は2つ(a、b)あります。

a  :職務関連賃金:基本給、賞与、役付手当等

b:a以外の賃金:退職手当、家族手当、通勤手当等

 

教育訓練も2つ(c,d)あります。

c:職務遂行に必要な能力を付与する

d:c以外のもの(キャリアアップのための訓練など)

 

福利厚生も2つ(e,f)あります。

e:給食施設、休憩室、更衣室

f:e以外のもの(慶弔休暇、社宅の貸与等)

 

以上の類型に応じた待遇を、事業主が講じなければならない程度は次のようになります。

◎…パートタイム労働者であることによる差別的取扱いの禁止

○…実施義務・配慮義務

□…同一の方法で決定する努力義務

△…職務の内容、成果、意欲、能力、経験等を勘案する努力義務

 

これを、パートタイム労働者の4類型に当てはめると、次のようになります。

第一類型:aは△。bは該当しない。cは△。dは△。eは○。fは該当しない。

第二類型:aは△。bは該当しない。cは○。dは△。eは○。fは該当しない。

第三類型:aは□。bは該当しない。cは○。dは△。eは○。fは該当しない。

第四類型:aは◎。bは◎。cは◎。dは◎。eは◎。fは◎。

 

次に、この◎、○、□、△の区分の効力を見て行きます。

◎は禁止事項なので、当然違反すれば罰則があります。○の実施義務と△の努力義務の違いは、法律の専門家によれば、「実施義務違反」は裁判で闘うことができるが、「努力義務違反」は裁判では闘えないということだそうです。

 

こうして見てみると、まことにこの改正パート労働法は、実のない法と言えます。◎の付く人は、4%とも、1%ととも言われていますが、肝心の政府にしてもはっきりとした数字を示すことができません。私が調べた正社員と同視できるパート労働者の数字は「続きを読む」に入れておきますので、関心のある方はどうぞ。

意外に事業主は、正社員とパート労働者の区分を、論理的に定義していないようです。

 

どうですか。自身の類型と待遇が合致していない場合、あなたは会社側と個人で交渉することができますか。

今回の、パート労働者の願いとは大きくかけ離れている改正パート労働法を、少しでもパート労働者のための法にするには、どう考えても個人では無理。ユニオンのような労働組合の一員になって、集団で対峙するしか方法がないようです。

上記の「努力義務違反」も、個人ではどうすることもできませんが、事業主が努力をしているかどうかを労働組合が点検し、団体交渉で使うことができるそうです。

 

改正パート労働法については、次回も続けます。

さて次は嬉しいニュースです。

1月29日のブログ「悩める卒業生からのメール」を紹介しました。彼女からその後の報告がありましたので以下に紹介します。

 

≪華ママさん、コメントありがとうございました。
華ママさんのコメントに「家族にしわよせが」ってありましたね。やはり、私が一番気になるところです。
仕事は自らの意思でしていますので、宝くじが4億円当たっても何らかの仕事はしていくと思います。
ただし、老後の心配がいらないから、嘱託でもパートでも構わないかも。〈笑)
悩んでいる私に、父が明るく「社員になったら、残業しないからって簡単にクビには出来ないんだよ〜。」って言ったんです。
社員だからこそ、今のように頑張り過ぎなくても、来年の雇用を気にすることも無く自分のペースでやれば良いと。
「目からうろこ」でした。私は自他共に認める 我道を行くタイプですが、1年後の契約更新の為に頑張りすぎていたようです。
社員O.Kとなれば、ラッキー!と思って、生活と仕事のバランスを考えて、自分の思うように働きたいと思います。
もちろん、仕事の手を抜くわけではありませんよ。
「働くママ」の銀行員の方(ブログ作成者の注:212日のブログで紹介したAさんのこと。また彼女については、インターネットで「京都新聞」→「TOP」→「右側下方『社説・コラム・ニュース詳報』の下方「働くママは今」→「()時間と手間のロス省く」の女性は彼女です。)の、同じ業務でも時間の無駄を極力減らすというのにも刺激を受け、前以上に業務の効率化に目覚め、時間削減に成功しています。職種柄、経理部門は決算と監査時期は地獄・・・。決算は1年目で部分部分の手伝いをした程度で、よく理解出来ないので業務の効率化は難しいですが、そのために何をどんな風に揃えたりまとめたりすれば良いのか、手順書を含め作成して、段取りよく出来る下地を作れば前よりはずっと楽になるはずなので、頑張ります!
悩める卒業生より≫

 

そして報告が来ました。彼女はついに今年の4月から正社員になります。来年の契約更新の話のときに勇気を出して「正社員にしてください」と言ったことが実りました。今日は長くなるので、報告だけに止めますが、彼女が正社員になれた要因は次回に検証していきます。

 

では今日はここまで。

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