嶋川センセの知っ得社会科ー女性のためのお仕事相談室ー

女性が働き続ける上での様々な情報を提供し、また仕事上の様々な問題を共に考えます。

2008年08月

8月23日の新聞に、次のような社説が載りました。

「派遣労働者の労災が急増していることが厚労省の調査で分かった。2007年度に業務上、4日以上休業するか死亡した派遣労働者の労災による死傷者は5885人で、前年より2199人、59%増えた。製造業への派遣が解禁された04年当時と比べると、派遣労働者の数は約40%増えたが、労災被災者は約9倍もの伸びを示している。」

 

次の記事を見てください。ちょっと古いのですが、2002年といえば、製造業への派遣が検討されていた時期です。そのとき、経営者は「製造業への派遣なんてとんでもないことだ」と言っているのです。次がその言葉です。

20025月朝日新聞主催の「ワークシェアリングは働きやすい社会を可能にするか」をテーマにシンポジウムが開かれた。そこに参加した当時の日経連副会長大國雅彦氏は経営者側を代表して次のような発言をしています。(ワークシェアリングに反対の意見です。)

「付けたばかりの設備は40年も50年も持つのです。従業員もエクセレントなトレーニングをされています。これによって何とか持ちこたえる。これも日本を支えている1つだと思う。それを支えるのは従業員の忠誠心です。」「日本の高度成長を支えたのは日本の労働者でした。これらの主力が裁量労働をやっている人たちです。現場の作業員といえども、知恵を出す仕事を一緒にやっている。そういう人たちを簡単に時間給で割り振って誰かを入れてくるなんてことはとてもできない。」(直接雇用関係のない派遣労働者は製造業には向かいないと言っているようですが…。)

 

もう一つの文章を見てください。派遣労働者の言葉です。

「古株の派遣・請負労働者の士気が低かった。社員がいないと新入りに任せて、自分たちはサボる。商品が好きでやっているわけじゃないから、愛着もないんですよね」(湯浅誠『反貧困』岩波新書)

 

最初の労災に関連する、考えさせられる実に矛盾した2つの文です。でも、製造業における労災の増加は予見されていたという感じですね。

さて、前回の続きです。

 

<職務評価について>

WWN:今まで日本は年功序列だから職務評価はできない、女性の勤続年数が短いからできないと政府は言ってきた。ILOはずっと評価システムをしなさいと言ってきているのに、企業の都合に合わせて国はこれに答えていない。国として企業を指導しなければいけない立場ではないか。

 

森教授:京ガス裁判は、職務分析をして裁判所に意見書を出した初めての裁判です。きっちと調べてほしい。企業は既に年功制度を変えてきています。成果主義からさらに、りそなやロフトなどは男女や正規・非正規に関係なく、人ではなく仕事の賃金を付けてきています。

 

厚労省:企業は成果主義に変わってきて、人ではなく仕事に付くというように変わってきています。調査によると労働者も使用者ともに納得していませんし、うまくいっていません。本当の意味の成果主義、仕事に賃金が付くという制度は企業にはなじんでいません。

 

WWN:今の成果主義は恣意的で、課長や部長が勝手に決めている。だから女性たちが苦しんでいるのです。私たちが言っているのは、ILOが勧告している客観的でジェンダーバイアスのかからない職務評価が必要と言っているのです。国が規範を示して、結果ではなくプロセスや努力を評価するような評価システムを作って皆が納得できるシステムを構築するべきです。京ガス裁判も兼松裁判も、原告側が何ヶ月をかけて職務評価を行い、裁判所に突きつけたから、あのような判決が出ました。裁判所が自動的に判断したのではないのです。労基法4条にはっきりと「同一価値労働同一賃金」と書いてあればもっと早く解決したはずです。私たちが頑張ってきたから裁判所を動かせたということを認識してほしい。

 

兼松原告:判決は一部勝利といえるものですが、それをもたらしたものは18年前に行ったペイ・エクイティ研究会での研究成果をもとに職務評価をしたことが格差是正の大きな力になりました。第二次男女賃金格差研究会では、職務評価システムについての研究をさえるのですか。

兼松裁判は、このブログの2008227日を見てください。

第二次男女賃金格差研究会の正式名称は「変化する賃金・雇用制度の下における男女賃金格差に関する研究会」

 

森教授:第二次男女賃金格差研究会において研究するべきことは「ILOが指摘しているように格差が発生する原因や、差別賃金に対する理念を研究するのではなく、具体的な格差縮小の手段について研究するべきです。職務評価システムについての検討を行う公労使による検討会などを考えてはいかがですか。

 

厚労省:第二次男女賃金格差研究会でどのような課題を取り上げるかはまだ決まっていない。職務評価システムを検討したことはないしこの研究会で取り上げると決めていない。有識者の選定を行い、そこで必要と考える場合には、テーマになることもありうるが、現時点でははっきり言うことができない。

 

(なんたる悠長さ!有識者の選定と厚労省は言ってますが、労働問題の研究者が、職務評価制度を理解しているとは限らない。むしろ理解している人は非常に少ない。この省庁交渉の厚労省のスタッフの目の前に、最も精通した人物がいるというのに。多分森教授は選ばれないんだろうね。)

では今日はここまで。

ご近所での挨拶は「暑いですね」の一言です。

毎日顔を合わせているご近所同士では、この言葉以外の適切な表現を思いつきません。それくらいあつ〜い。

 

さて、今日は、「同一価値労働同一賃金」についての厚労省の考えをお知らせします。ILOから何度も「日本政府は法律を作りなさい」と言われています。これを日本政府はいかに考えているのか、WWNが中心になって問い質した省庁交渉の紹介です。

(WWNは私も会員の一人です。以下にアクセスしてみてください。)

http://www.ne.jp/asahi/wwn/wwin/

 

日時は5月12日。

交渉相手は:内閣府、厚生労働省、外務省、最高裁判所、法務省。

交渉する側は、WWN、商社兼松の原告・住友メーカ裁判元原告・岡谷鋼機元原告、森ます美昭和女子大教授、福島みずほ・紙智子・西村ちなみ国会議員等18人。

 

内容は、WWNのニュースレターから取りましたが、一部難しいところもあるので、少し解説を加えてました。

私も参加したかったのですが、丁度日本にいなくて機会逃しました。次回参加して、生の取材で伝えたいと強く思っています。

 

≪同一価値労働同一賃金の概念を日本の法律にすることについて≫

 

WWN:20073月にILOは日本政府に対して、「広範で継続的な男女格差は縮小していない。労基法4条がこの概念をカバーしていると日本政府は言っているが、労基法4条が機能していないのではないか」と指摘している。

(労基法4:使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。)

 住友メーカーや岡谷鋼機などの裁判が10年以上もかかったが、労基法4条にこの『同一価値労働同一賃金』の文言が明記されていれば判決も違ったし、こんなに年数をかけなくてもすんだと原告たちは考えている。このことをどの考えるか?

 

厚労省:労基法4条はILO号条約の要請を満たしていると考えている。裁判において4条が同一価値労働同一賃金賃金にそって解釈された例があるので、現時点において法改正の必要はないと考えている。しかし、男女間格差は大きく、重要な問題であるので、施策の充実を図っていくつもりです。

(ILO100号条約:「同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約」。1条で、「同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬とは、性別による差別なしに定められる報酬率をいう。」と規定し、男女の仕事が異なっても、その価値が同一ならば同じ賃金を支払わなければならないとする。日本は1967824日に批准。)

 

WWN:ILOは「労基法4条は同一価値労働同一賃金の要素については言及していない」と勧告している。もし、入っていると考えているのなら、通達を出すとか、周知をはかるとかしてはどうですか。

 

厚労省:裁判例でも出されているの、ILOの要請は満たしていると考えています。

 

WWN:裁判例はどこのものですか。

 

厚労省:ILOに出したのは2004年の内山工業のものです。ここで男女の職務の比較をしています。2008年の兼松判決も男女を比較した記述があります。

 

WWN:内山工業は同一労働です。今の回答で、兼松の判決が同一価値労働同一賃金であると厚労省が認めて、お墨付きをくれたのなら嬉しい。95(改正均等法)以降、多くの裁判が非常に長く困難な闘いを余儀なくされました。労基法4条に明記されていれば違ったはずです。

 

(女性労働問題の判例は、下記のサイトで見ることができます。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/10/s1007-6a.html

内山工業は4番目の判例、次の京ガス裁判は5番目に書いてありますが、このブログでも2006315日と25日にも詳しく書いています。)

 

森教授:京ガス事件はなぜここに上がってこないのですか。

 

厚労省:(沈黙)

 

森教授:同一価値は職務評価で計って、価値が同じなら同一という職務評価をするプロセスが重要と指摘されていますが、日本は評価システムに言及していません。

 

厚労省:ILO勧告には職務評価分析という指摘があるが、日本の賃金システムは、仕事ではなく、勤続年数とか年功とかもろもろのものによって成り立っています。職務評価という手法よりも、人事考課や賃金制度に差別がないかを見ていくほうが日本の雇用管理に合っていると考えています。職務評価に取り組むより、制度の透明化などのガイドラインを出すなどの取り組みを進めていきます。

 

WWN:今まで男女賃金差別については、年功序列だからとか、女性は勤続年数が短いからできないと言ってきた。現在は成果主義だからできないと言っている。ILOはずっと職務評価をしなさいと言っているのに、国は企業の都合に合わせて答えを出していない。国として企業を指導しないといけないのではないですか。

 

森教授:京ガスの裁判は職務評価をして意見書を出した日本で初めての裁判です。きちっと調べてほしい。今や企業は年功序列制度を変え、成果主義さらに進めています。りそな銀行やロフトなど男女、正規・非正規に関係なく仕事に賃金を付けてきています。

 

(解説:ロフトは正社員、契約社員、パートという雇用形態をなくし、「ロフト社員」に一本化する。すべての社員の賃金は職務内容と勤務時間で決まる。りそな銀行は、ロフトと考えは似ているが、正社員とパートの区分を残したまま、能力評価基準と職務等級を統一して、正社員とパートの賃金を一本化する。同一職務で評価が同じなら時間給格差はなくなる。また働き手が正社員かパートかの雇用形態を選ぶことができる。日経ビジネス2008年2月18日号より)

 

厚労省:企業の制度については成果主義という形で仕事に就くというように変わってきていますが、調査によると労働者・使用者ともに納得していませんし、うまくいっていません。再び年功序列や能力といった方へ軌道修正しているとも聞いています。本当の意味での成果主義、仕事に対する賃金という考えにはなじんでいません。

 

長くなるので、いったんここで切ります。次回もこの続きです。

では今日はここまで。

水分補給をこまめにしましょう。

このページのトップヘ