台風の被害はありましたか?
昨日は大阪で裁判の傍聴がありました。JRが止まったりしたら大ごとなので、早めに出かけました。駅まで傘をさしましたが、それ以降は傘なしで大丈夫でしたが、足取り重く帰ってきました。
その訳は、裁判の原告(高裁段階だから控訴人)が負けたからです。「控訴人の訴えを棄却する」とたったこれだけでした。控訴人は自治労A県本部の嘱託書記で、18年間も勤務していたにも拘わらず、更新されずに解雇になりました。
解雇の理由は、表向きの理由と実は…の2つあります。実は…はハラスメントです。
表向きの理由は組合結成です。採用当初の労働条件がどんどん悪くなっていった、例えば採用当初、嘱託といえども定年まで雇用するとあったものが、労働者派遣法のような働き方の規制緩和が推進されるのと時期を同じくして、彼女も毎年、契約更新を繰り返すような労働条件になっていきました。そこで他の嘱託書記と労働組合を結成し、労働条件について交渉を申し入れていきます。
私が察するに、控訴人が労組を作り交渉をするなどは、自治労で働いていたからこそ知り得たことで、そういう意味では自治労が推奨する労働者の権利行使の一方法を実行したに過ぎないともいえます。詳しくは「続きを読む」を見てください。
一審の大津地裁は敗訴、そして昨日の大阪高裁の判決も敗訴でした。大阪高裁に舞台が移ったときに、私はBさんと共に彼女の職務評価をしました。その結果を陳述書にして裁判所に提出しました。職務評価は「負担」「知識・技能」「労働環境」「責任」の4項目について、その仕事の価値を測っていくものです。18年間も同じ職場にいたのだから、誰よりも仕事に精通しています。Bさんの仕事内容を聞きながら、よくこんなに沢山の仕事をこなしていたなぁと感心してしまいました。当のBさんも「あんたは嘱託やから、たいした仕事はしていない」と言われ続けていましたので、すっかり洗脳されていたようで、「えっ、私ってこんなに凄い仕事をしていたの!?」ってびっくりしていました。今、Bさんの後には派遣の人が来ています。派遣なら3年未満で正々堂々と解雇できますから。
「Bさんの契約更新をしないでおこう」と誰が言い出したのでしょうか。
実は…は、ハラスメントですが、18年間同じで職場で仕事に精通している人がいて、その人の身分が非正規である(このこと自体がヘンなのですが)、電話の応対もてきぱきこなす。「あなたは嘱託でしょう。正規のような応対をしないで」と目障りだったのかもしれません。でも、Bさんが「私は嘱託なので代わります」と言えば、「それくらいやりなさいよね」となったかもしれません。
雇用する立場の人は、解雇することの意味を深く考え悩み抜かなければなりません。解雇は、金銭は当然のこと、生活、その人の人生そのものをも否定してしまうことになります。Bさんに仕事上の問題点があれば言えばいいのです。立場はBさんの方が弱いのですから、怖くて言えないことはない筈です。
ハラスメントをしたのは同性だとそうです。この方は、ご自身をてきぱき仕事の出来る有能な女性と思っていることでしょう。現在はトップの座にありますから、努力もされてきたのだと想像します。このハラスメントをしたのも、されたのも同性であることに、問題があると私は考えています。
以前にも書きましたが、「先生、女の敵は女やで」と女性卒業生が言うたびに、「そうなんだろうな」と思いつつ、「その背後で笑っているのは誰?」と返してきました。80年代、女性差別撤廃条約批准のために国内で条件を満たす環境を作らねばなりませんでした。政府は均等法を制定しました。それまでの女子のみの家庭科履修が、男子も履修するようになり、深夜労働などの女性のための保護法も解禁されました。ようやく女性も男性のように能力を認められるようになったと思いましたが、「男性並に働く」ことがその前提になりました。先進国で一番労働時間の長い男性労働者の労働条件が改善されたのではなく、女性がその中に取り込まれていきました。社会的価値観は変わらないままですから、当然、家事育児介護を担う女性は脱落していきました。男性並に働くことが出来る女性とそうでない女性の二極化が起りました。男性の働き方へ男性並に働く女性が算入してくれば喜ぶのは誰か分かります。より有能な人材の中から選別することのできる経営陣です。こういう構図に女性ははまってはいけないし、敏感でなければなりません。
中山千夏さんって名前聞いたことがありますか?一番近くで言えば「じゃりん子チエ」の声を務めていたタレントです。彼女が実に示唆に富んだ文章を書いています。「ソクラテスの妻に会いたかった」から一部抜粋します。
『夫の名によって仕事する女は、自分しか頼りのない私から見れば、ふざけたモンだった。(筆者は)リブで変わった。彼女たちは、男に同化すること、男の名によって在ることを女に強いる社会の申し子であり、これは全女の問題と知ったからだ。かくして、文壇が蔑視しかつ利用してきたソクラテスの妻たちは、今や私の同志である。』<()は私の注です。週刊金曜日863号から引用>
では今日はここまで。
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