嶋川センセの知っ得社会科ー女性のためのお仕事相談室ー

女性が働き続ける上での様々な情報を提供し、また仕事上の様々な問題を共に考えます。

2011年11月

川島織物セルコン男女賃金差別訴訟の続きです。
提訴から2年間、ずっと書面の遣り取りでした。「裁判が始まったら傍聴和に行くからね」と原告の松田さんに言っていたのですが、突然和解のメールが回ってきました。原告側の宮地弁護士の解説を要約します。宮地弁護士は94日で紹介した中国電力男女賃金差別事件の二審の弁護士のお一人でもあります。原告の側に寄り添うことの出来る感性豊かな弁護士です。


要約

被告の会社側の主張

・原告と男性営業職とは業務内容が異なる。扱う商材が違う。男性は、大型商業施設に対する責任施工取引を担当していたが、原告はそのような取引を担当していない。


原告側の反論&判明したこと
・上記いずれの理由も、会社の男女異なる取扱いを、さらに浮き彫りにするものではあっても、松田さんへの賃金差別を合理化するものではない。
・原告は、入社時は事務職であったが、数ヶ月後から営業に従事するようになり、以来、男性と同様の営業職に従事してきた。しかし男性はすべて総合職であるが、原告は地域限定職である。

・会社は、原告が主任に昇任しなかったのは、原告の年間査定が、C上を超えたことがないからだとしていたが、原告の比較対象の男性は、年間査定がC上でも主任に昇任している。


和解をする上での問題点
・ 裁判所は、男女差別が存在したことを前提に和解協議を進行させたが、原告にとって困難な課題は、原告が入社した当時の会社が、社員が十数人の小さな会社であり、その後、他社との合併で全体の規模は大きくなったもの、原告と社歴が同じで、年齢・勤続年数がほぼ等しい男性社員というと、たった1名に絞り込まれてしまい、いわゆる男女差別の大量観察ができないという点。


和解内容

この1名の男性との過去10年間の差額賃金の総額は、約800万円。和解解決の水準は、この約半分の450万円を支払わせたことになる。


和解における原告側の問題点

・比較対象者が1名しかおらず、男女の賃金についての大量観察ができないという点。
・判決になれば時効という問題も出てくる可能性があった。


松田さんが和解を受け入れた最大の要因はなんだったと思いますか?原告の松田さんの言葉です。前回に「松田さんを全否定」した会社側の言い分を書きました。ずっと営業の仕事に従事し、男性と同じように深夜勤もこなし、顧客の信頼を得てきた松田さんに対し「あなたは幽霊です」と言ったも同然の言葉でした。


和解を受け入れるか、判決までいくべきか、ずいぶん悩みましたが裁判官の「これまで提出されている書面から、松田さんが男性と同等の営業の仕事をしてこられた事が見て取れる。」という発言があり、この一言が和解を受け入れた大きな要因でもあります。

では今日はここまで。

今冬の寒さは厳しいそうです。南半球のラニーニャ現象の影響だとか。TPPに参加すべきか否かも日本の思惑を超えたところの要因で決まるのでしょう。「TPPは純粋な貿易問題ではない」(朝日新聞20111113日朝刊)とありますが、今読んでいる『バクダッド・バーニング、イラク女性の占領日記』(アートン2004)からも、アメリカがイラクを攻撃した真の意図が見て取れます。これについは、またどこかで紹介したいと思っています。


日本の女性の地位は相変わらず最低です。次の文は「ギャップ」についてです。即ち格差です。だから例えば経済で日本より豊かでない国でも、格差が小さければ上位です。

世界経済フォーラム(WEF)は、1012日、2010年のジェンダー・ギャップ指標の報告を公表しました。ジェンダー・ギャップ指標は経済、政治、健康、教育の4つの分野で男女間の格差を表したものです。経済の分野では、参加、報酬、昇進などの格差、教育では、初等、中等、高等教育における格差、健康では、出生児の男女比、平均寿命の差、政治の分野では政治的な意思決定の場における男女の格差が取りあげられています。


1
位のアイスランドから7位のデンマークまでは09年と変わらず、上位を主に北欧諸国が占めました。世界的に見て、健康と教育の分野での格差は縮小していますが、政治と経済の分野の格差の縮小が進んでいないことが指摘されています。
日本は、09年の報告では、75位とされていましたが、後に101位に修正されました。10年には、94とわずかに上昇しています。報告は、経済の分野で女性の報酬にわずかな増加があったこと、国会議員の数の増加などを理由にあげています。一方、日本と104位の韓国がOECD諸国の中で最も低いことも指摘しています。

アジアでは、フィリピンが9位と09年と変わらず、スリランカが16位でした。他の地域では、フランスが、閣僚の女性の割合の低下など政治の分野での格差の拡大により、18位から46位と大きく後退し、一方、米国が経済や政治の分野での参加の拡大、教育での格差の縮小などにより31位から19位に上がり、この指標が2006年に始まって以来、初めて上位20位に入りました。
出所:The Global Gender Gap Report 2010 (WEF) 
http://www.weforum.org/en/Communities/Women%20Leaders%20and%20Gender%20Parity/GenderGapNetwork/index.htm



この情報は私が参加しているWWNのMLから得ました。上記のサイトは「ヒューライツ大阪(財団法人アジア・太平洋人権情報センター)がHPに載せたものです。これに対し、


日本で順位が低いのはいつもの事ですが韓国が107位というのは納得できない気がします。その理由は 東洋経済「女性はなぜ出世しないのか」1015号で、韓国では外交官試験で女性合格者は60%、国家公務員試験、司法試験合格者は50%に迫る勢い。(2010年)と書かれているのです。1996年公務員でのポジティブ・アクションが導入され女性採用枠が高められたとあります。結果が出るのはこれからなのでしょうか。 ともかく数年先の韓国と日本の違いは歴然としたものになりそうです。】という投稿がありました。

日本の女性の状況を最も知らないのが、当の日本の女性だと思います。その典型的な裁判の和解の報告をします。
原告の松田さんは、結構有名な会社<川島織物セルコン>で営業の仕事をしてこられました。川島織物セルコンの壁紙は最高裁の法廷にも貼られているそうです。先日京都のデパートの呉服売り場で見た高価な帯は川島織物の製品でした。原告の松田さんが最初に働いたのは内装工事の会社で、小さな会社でした。現在の社名は川島織物セルコンですが、吸収合併されて現在の社名になりました。最初の34ヶ月は事務の仕事でしたが、その後は社内でただ一人の女性営業職として男性の営業職と同等の職務についてきました。松田さんが賃金に疑問を持ったのは、この会社が現在の川島織物セルコンに吸収合併されるに当たり、人事制度の見直しをしたからです。松田さんの賃金ランクは、入社12年の男性社員のランクでした。また退職金制度の廃止にあたって示された退職金は勤続17年で、 2,468900円という低額でした。彼女は悩んだ結果、平成2039日、人事部長に説明を求めました。人事部長は彼女の賃金について「総合職と地域限定に分かれていまして、女性の場合は地域限定職、いわゆる一般事務の方がそうです。だから松田さんの場合、一般事務職の賃金です」と答えました。また、松田さんが「私は営業職です」と言うと、人事部長は「女性の営業職はありませんし、女性の営業もいません」と回答し、その後の社長との直談判でも退職金が低いことを含めて人事部長と同じ回答でした。(松田さんの仕事を全否定しています。)


その後の執拗な退職勧奨に松田さんは「会社は、
私が辞めるというまで退職勧奨は続くと言いました。合併しても何ら変わらず、もはやこの組織の中では何を言っても無駄なんだと思い知らされると同時に、権力の前にあまりにも無力である自分が一人で立ち向かうことの困難さに、退職勧奨を受け入れ退職しました。もうこれ以上、何も失うものなどないと思うに至り、裁判という選択をしました。」と語っています。

長くなったので、中断します。和解内容は次のブログで見てください。

では、きょうはここまで。

このページのトップヘ