嶋川センセの知っ得社会科ー女性のためのお仕事相談室ー

女性が働き続ける上での様々な情報を提供し、また仕事上の様々な問題を共に考えます。

2014年03月

いつもとりとめない私の感想を先に、本題は最後にちょっと、を反省し、今回は前回の続きから始めます。前回の課題は、職務給と職能給でした。
日本は、先進国の中では特殊な賃金体系で、所謂職能給です。

昨夜、非正規労働者の小さな集まりに参加しました。大阪府下のハローワークに9年間勤めていた非正規労働者が、例年のように雇用の更新があると信じるに足る上司の言動にもかかわらず解雇されました。現在その不当性を問うている裁判の原告を励ます会です。励ます話をしてくれたのは3人。
京都市女性センターウィングス京都の非常勤職員の伊藤真理子さん。ーこの方は、仕事の内容が正規と同じ、というよりも、彼女が就いていた相談業務は嘱託しかいない、言いかえれば、正規職員と相談者からは思われていたー伊藤さんは正規職員との賃金差を求めて裁判をされました。(詳細は、伊藤真理子さんと検索すれば出てきます)京都地裁、大阪高裁、最高裁全て伊藤さんが負けました、具体的に伊藤さんから仕事の内容の説明がありましたが、他の部署の正規職員と同じくらいの仕事内容でした。伊藤さんの裁判後、嘱託職員の給料は大幅に改善され、嘱託かから正職員になった人が現在課長の職にいるそうです。

2人目は大椿裕子さん、関西学院大学を雇い止めされた方です。大椿さんは、裁判ではなく労働審判の方法を選びました。大椿さんは「4年任期」の契約で雇用されていたので、裁判では即刻敗訴の可能性が高いと判断されたからです。(大椿さん、労働審判で検索してみてください)大椿さんは関西学院大学の障害のある学生支援コーディネーターの仕事をしていました。大椿さんはなぜ4年で雇用期間が切られるかに疑問を持ちます。当然ですよね、新たに入学する学生に4年の経験は生かされます。有期雇用20年というような人はざらにいます。20年もその仕事が続いているのであれば、その仕事は無期雇用ということですよね。大椿さんが解雇された後に、経験のない人が採用されたそうです。

3人目は神戸刑務所偽装請負国賠償裁判元原告の凪佳子さんです。凪さんは、刑務所内の受刑者のために、刑務所職員と相談しながら、炊事担当の受刑者と共に服役者の食事を作ってきました。しかし、凪さんは、業務請負契約を結んだ派遣元から刑務所に派遣されていたので、刑務所職員から指示や命令を受けない立場なのです。なぜなら、刑務所は凪さんの直接の雇用主ではないからです。大阪高裁は、一審の神戸地裁の判決を変更し、165万円の賠償を命じました。(たまには労働者勝つこともがあるのだぁー)これも検索すれば出てきます。凪さんの裁判の後、全国の刑務所は管理栄養士を直接雇用に切り替えました。

3人とも、思い出したくもない裁判での屈辱や悔しさはあるが、後に続く女性たちの力になれたのではないかと思っていると話されました。

特に、伊藤さんのケースは、今日のテーマである職能給と職務給に深く関係しています。

今、卒業生の何人かに協力して貰って「非正規労働者の実態調査」をしています。やはり、仕事の内容と賃金が釣り合っていないとの声が多いですね。

正規労働者と非正規である卒業生の仕事の価値についての質問に、漠然とではありますが、各自が点数を付けてくれました。正規を100点とすると、非正規である卒業生は100点とか、90点とか。ところが、賃金となると正規がいくら貰っているか分からないとの回答です。職場で、賃金の話をしないというのもありますが、非正規は時給で、正規は月給ということも要因の一つです。手当を除く「基本給を労働時間で割る」というのも時給の目安になりますが、正規労働者にはボーナスもあり、退職金もあります。また、非正規労働者には支給されない住居手当や家族手当、金銭には換算しにくい福利厚生費用も支給されています。非正規は時給と通勤費(これも時給に含まれている人もいます)しか支給されていませんから、正規の貰っている諸手当もやはり賃金の内と考えなければ、納得できないません。このように、仕事の価値は、正規と非正規で大ざっぱでも判断がつくのに比べて、正規労働者の賃金を時給換算するのはとても難しいのです。また、同じような仕事をしている正規にも、賃金に違いがあります。単に勤務年数が長いということだけが賃金に反映されている訳ではありません。
これが顕著に現れるのが、男女の賃金差です。ずっと書いています中国電力男女賃金差別事件の原告の長迫さんが典型的な例です。

なぜこのようなややこしいことが起こるかといえば、日本の賃金体系が年功賃金という職能給だからです。仕事の価値で賃金が決まるのではなく、職務を遂行する能力とか、意欲とか、努力とか、企業への忠誠心とか、目に見えない不確かなものを査定した結果が賃金に反映されるのです。これに対し、仕事の価値に基づく賃金体系を職務給といいます。

日本の企業に勤める大半の正規労働者は、入社後、営業からデスクワークまでいろんな分野の仕事を経験し、昇格・昇給していきます。EUの職務給の考えからすれば、これはあり得ません。EUやアメリカでは、エリートでない限り、営業から経理事務へといった部署替え、他の地方への転勤はありません。労働者は契約書にある以外のことはしないというのが原則です。日本では、最初に配属された例えば、経理課勤務の辞令が永久に続くとは、特に男性は思っていません。

もし、ある会社で、同じような労働条件で、経理の仕事よりも、営業の仕事の方が賃金が多いのなら、営業の職に就きたいと思う人は多いでしょう。これでは人事異動はできません。誰も安い賃金の職に就きたくないからです。転勤あり、いろんな部署への異動ありを可能にするには、職能給という年功賃金体系を取らざるを得ないのです。日本で、仕事の価値を計る職務評価制度が普及しない、抵抗が大きいのは、このような特殊な賃金体系があるからです。

では、職能給だったら、非正規労働者の仕事の価値と賃金をどのようにして計ればいいのでしょうか?
こんなに頑張って仕事しているのに、なんでこんなに賃金が低いの?卒業生の嘆きは解消されないままです。結局、比較し難い日本型賃金体系の中での、非正規労働者の賃金は、その人の仕事の価値で決まるのではなく、国の最低賃金の額で決まっているのが現状です。

ユニクロは、現在の30000人の非正規の内、16000人を限定正社員として採用すると発表しました。賃金は正社員の8割程度とか。これが一つの手掛かりになるかもしれません。まず、限定正社員と非正規の職務評価をする。職務評価は、負担、知識・技能、責任、労働環境の4つです。昨日非正規、今日から限定正社員。何が変わるのかを分析すれば、非正規の賃金の目安が計算できるかもしれません。ただし、あのユニクロです。限定正社員も非正規と同じくらいの賃金だとすると、また別の問題も生まれますが、この制度が動き出したら、賃金表を手に入れ、職務評価をやってみる価値はあると思います。
うまくいけば職務給の道筋が見えるかもしれません。

では、今日はここまで。

311日の東北大地震が起こった時間、今年、私は図書館にいました。館内放送があって黙祷しました。
反原発の集会が39日、膳所公園であり参加しました。集会で、福島相馬市から滋賀県に避難されている佐藤さんの話がありました。原発の爆発大事故の後、佐藤さんは小さい子どもを連れて最終的に滋賀に来られましたが、自主避難です。政府からの避難指示が出た地域から避難したのではなく、避難指示が出ていない地域からてんでばらばらに知り合いを頼って避難したのが自主避難です。この自主避難した人には、皆無と言っていいほど保障がされていません。要は、お上(かみ)の指示に従わなかった者は、お上の保護の対象にならないということだと思いました。後から後から出てくる事実。放射能を過小に見積もる政府の思惑通り、政府の言うことに疑問を持つ人は放射能に神経過敏になっていると非難され、科学的な根拠の不確かなものは、風評被害で一括りにしてしまう風潮に、福島の人たちは抗うことができない中に置かれているようです。憎むべきは原発推進を推し進め、絶対安全という神話を支えてきた政権、官僚、研究者、マスコミ、電力会社なのに、同じ被害者同士がいがみ合っているのが現状です。矛先が向かわないから、本来の責任者は安泰です。連帯するべき者を対立させているのでは?と疑ってしまいます。

毎週金曜日の関西電力前集会で、関電のビルに向かって「関電で働いている人、よう聞いてや。原発はあかんで。あんたら反省しなさい」のような言葉を発する人がいます。確かにそうなんだけど、違和感あります。今、関電ビルの中で、集会参加者の声を聞いている社員の中には、原発反対!と思っている人もいるだろう。でも、口に出したら職を失うかもしれない。福島で被災した人がお互いにいがみ合うような状況を、関電の社員と集会参加者との間で作ってはいけない。「関電で働いている人、集会の邪魔せんとい」くらいにしないと連帯はできません。福島から自主避難した人、福島に留まっている人、お互いに齟齬を生み出している状況を、ある高校生の家族を通して書いた記事を読みました。辛い内容ですが、状況をよく捉えている文章です。「続きを読む」に入れました。

さて、今日は、職務給と職能給の予定ですが、とんでもないことをドサクサまぎれに内閣がやってくれました。311日の東北大震災に人々が思いを寄せている日に、最悪といわれる労働者派遣法の改正(史上最悪)案が内閣で決定されたのです。閣議決定され、国会で審議されるという過程があっても、特定秘密保護法の国会採決で経験したように、与党は強硬なる手順で、いずれ法案は法になるでしょう。労働者派遣法は、当初の趣旨(そんなものがあったとは思えませんが…)どんどん変わってきています。

今回の大きな改悪点は、以下です。(ブルーは私の感想です)

企業が3年ごとに働き手を交代させれば、どんな仕事も、ずっと派遣に任せられるようになる。いまは秘書や通訳など「専門26業務」でない限り、3年までしか派遣労働者を使うことができなかった企業は、3年その仕事をしたAさんを解雇し、Bさんをその仕事に付けることができます。(今までは26業種以外は、3年以上その仕事をしていれば、Aさんを正社員にしなければなりませんでした。実際は違法だらけですけど)。また26業種も撤廃されます。永久に派遣労働者は派遣のままで、企業間をたらい回し状態で働くこととなる。→ある仕事を派遣労働者がずっとやってくれるのなら、正規労働者は必要なくなる。→but、その企業で、スキルアップした良質な労働者は少なくなるだろう。
人材派遣会社はすべて国の許可制にする。派遣労働者への教育訓練を義務づけ、待遇改善に向けた国の指導も強める。→派遣労働者が派遣先を解雇され、すぐに次の派遣先企業が見つからなかった場合、案では派遣元会社はその労働者を派遣元で雇いなさいとある。そんなコストのかかることを派遣元会社はしないから、教育なんかもしない。

労働者派遣法はどんどん企業側の都合に良いように変わってきていますし、ぱっと読んでだけでは何が問題点なのか直ぐには分からないような内容です。私はこう考えています。法の中身を変えるよりも、正社員よりも時給を2割増しにするというEUの方針を取り入れたらと思います。でもこれが最も難しいですね。正社員は、「パートは安くて当たり前」と信じ切っているし、パートもそう思っている人が多いから。

今年は、春闘に非正規労働者の賃上げも加わったと報道していました。スーパーを支えているのはパートの女性たちです。なぜ、日本のパートの賃金は、正社員に比べて安いのでしょうか?EUは日本よりは格差が少ないのでしょうか?それの手がかりが、職務と職能の考え方です。結論から言うと、日本の正社員は職能給といわれる賃金システムにいます。これからはチト眠たくなる内容だから、次回に回します。

では、今日はここまで。「続きを読む」もよろしく。

続きを読む

このページのトップヘ