嶋川センセの知っ得社会科ー女性のためのお仕事相談室ー

女性が働き続ける上での様々な情報を提供し、また仕事上の様々な問題を共に考えます。

2015年06月

労働者派遣法改正の野党共同提案のあぶなさ!

心穏やかに、素朴に暮らせない日々です。

先週は、労働者派遣法の改正(適切な言葉ではありません。変更というのはどうでしょうか?)案が、衆議院厚生労働委員会で審議され、今週にも政府案が可決されそうです。維新の党が途中から自民・公明の案に加担したので、不十分な文面ながら議員に「賛成しないで、廃案に追い込んでください」FAXをしました。

実は私は、野党が共同提案した「同一労働同一賃金推進法案」にも反対なのです。どんな内容であれ、労働者派遣法そのものに問題があると考えています。

このブログでも何度も何度も「同一(価値)労働同一賃金」という概念と、そのために職務を評価し、数字化する得点要素法という職務評価制度を紹介してきました。

これは、職務を「知識・技能、責任、労働環境、負担」の4要素から分析します。ILOが推奨している方法です。共同提案した野党の議員の何人が、この制度の長所と短所をご存じなんでしょうか?この方法は、諸(両)刃の剣にもなります。
派遣労働者の仕事と、正社員の仕事を比べてみて、正社員が
100点満点の90点で、派遣労働者の点数が80点となったと仮定します。

この場合、あなたは、どういうことが起こると予想しますか?

派遣労働者の賃金を、点数に比例して上げる。
正社員の賃金を、派遣労働者の賃金と比較して100対80になるように、点数に比例して下げる。

同一労働同一賃金という概念を労働者のものにするためには、その前にしなければならないことが多々あります。

例えば、

*いかなる点数になろうとも、正規も派遣労働者も、現在の賃金を下げない。
*職務評価は、個人ではなく、就いている仕事の内容についてする。
*ILOの得点要素法を遵守する。
*職務評価を申し立てた派遣労働者を解雇しない。
*弁護士を含む第三者からなる機関が職務評価をする。
*派遣労働者を雇用している全企業に第三機関が調査する。
*問題のある企業には、実効あるペナルティを与える。

等々。

素人の私が考えても、あれこれ思い浮かびますが、こういう前提事項があって初めて野党の言う「同一労働同一賃金」が効力を持ちます。

以前にもこのブログで紹介しました、平成2411月に厚労省雇用均等・児童家庭局の委託事業で「パートタイム労働者の納得度を高め能力発揮を促進するためにー職務評価の実施ガイドラインー」は、ILOのものとは異なり、正規と派遣の職務における「責任」が、最初から差が付いていました。
そして、維新はあろうことか、派遣と正規は「均等ではなく均衡待遇」と、与党と修正してしまいました。「均衡」という言葉の曖昧さ!に、よくぞ官僚考えたね!とある意味感心してしまいます。
同一労働同一賃金を提案している野党の皆様、軽々しくこの概念を持ち出さず、「労働者派遣は3年が限度。その仕事が3年を超えてもある場合は、それに就いていた派遣労働者は正規採用とするべし」と、ただこれだけを言ってほしいですね。これでも、派遣労働を認めていることになるので、私としては、大いに妥協した提案なんですが…。

では、今日はここまで。

ハローワーク雇い止め裁判の判決がありました。

ハローワークで相談員として働いていた非正規の女性が、契約更新されなかったのは、原告の任用更新に対する期待利益を違法に侵害し、これにより損害を被ったとして、慰謝料の支払いを求めて大阪地裁に提訴していた裁判の判決が、5月29日にありました。「原告の訴えを棄却する」と、たったこれだけの裁判長の言葉。その間3秒、大病院の診療時間だって3分間くらいはあるのに…。3年間の裁判でした。

判決文は「《職員の任免》74条に基づき、任用期間が経過し、任期満了により退職したというほかはないから、任用予定期間経過後に再び相談員として再任用しなかったからといって、直ちにその権利ないし法的利益が侵害されたとはいえない。」でした。

一年ごとの任用を繰り返し9年間働いていた原告。それまでの更新時に試験はありませんでした。なぜこの年だけ公募をしたのか?原告側は、原告がセクハラを受けた同僚から相談を受け、その同僚に弁護士を紹介したり、上司に直言したのが一因であると考えています。が、それ争点にすれば、「そんな意図はありません」と否定されるだけ。有能な原告に「よくやっていただいています」「資格も取られたらどうですか」と複数の上司が言った言葉は、次も更新があるだろうと期待を抱かせるに十分であったという点を問題にしました。こちらの方が、争点は原告個人のだけの問題ではなく、多くの非正規労働者の共通の争点だからです。そして、期待権を抱かせるに十分な証拠を出しました。が、原告の訴えはことごとく退けられました。

判決はまた「セクハラがあった年の次の年度は採用されているではないか。だからセクハラが原因ではなく、原告に能力がなかったからだ」とも言っています。同僚にセクハラをした上司は、処分を受けています。その報復を、同じ年度にするでしょうか?そんなことをすれば報復人事だとすぐにばれます。

ここで肝心なことは、非正規公務員は、上記判決文にある《任用満了で退職した》という文言で職を失うことです。原告は公募と称された試験を受けました。15分後には「更新なし」の結果が出ました。彼女の代わりに他の人が任用されました。正規職員なら、能力がなかったとしても簡単に解雇されることはありません。労働者は何よりも働く権利が尊重されなければいけませんから。そこには生存権がかかっています。原告に能力がないのなら、9年間も働き続けられていた訳がありません。なぜ毎年更新されていたのでしょうか?

非正規労働者は、使用者の思惑一つでどうにでもなるということこそ問題にはしなければなりません。公務の非正規労働者になぜ、正規職員と同じ「任用」という制度が適用されるのかこそが問題なのです。今や、公務労働に従事する非正規労働者は、公務員の半分を占めています。それだけ「仕事」があるということです。毎年毎年、非正規労働者が継続的な仕事をすることの方が問われなければなりません。

私も、41日に現職の先生から「講師に来てください」と依頼を受けました。もし受けていたら、私は「任用しますという辞令」を貰っていたはずです。授業を持つ前に、公務員が法的に守らなければならないこと、任用という言葉の意味、そんな研修を受けることはありません。即授業です。経験のある者ばかりでははありません。大学を卒業した人が即講師になる例は多々あります。どう考えても「任用」ではなく、「労働契約」の下で働くというのが妥当な考えでしょう。
国を相手に、地方自治体を相手に、公務に従事する非正規労働者が地位確認を求める裁判は、すべて敗訴です。それは公務員が労基法で守られる労働者ではないからです。この仕組みを変えない限り、もしくは、恒常的にある仕事には非正規ではなく、正規の公務員を充てない限り、労働者としての権利のない非正規公務員の問題は解決しません。多分、原告は大阪高裁に控訴するでしょう。誰かが声を挙げないと、誰も気づかないままの、大きな問題です。

ではきょうはここまで。

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