NHKBSで「定年女子」という番組が始まった。主人公は53歳の部長職の女性。ある日突然、部長職を解かれ、平社員になるところから話は始まる。今まで部長だった人が、部下とか同僚のヒラとかになり、席を並べて仕事するのは本人も周囲も気まずいだろうと想像します。私は、23人の管理職を除いて全員ヒラの職場にいたから想像するだけですが、実態はそれ以上のものでしょう。主人公は結局「辞めさせて頂きます」と啖呵を切るようです。

IBMを解雇された男性の話を聞きました。「正社員消滅」(朝日親書)の著者竹信三恵子さんの講演会に、竹信さんに誘われて来場されていました。短時間でしたが、客観的にユーモアを交えて話しをする彼を見ながら、「なんで解雇なん?」とずっと疑問でした。IBMの人事管理についてはかなりのブラックのようです。グローバルブラック企業いうところでしょうか。IBMの≪ロックアウト解雇≫については、上述の竹信さんの著書で知ることができますし、検索すると「解雇になった原告たちの裁判」も出てきます。

正社員が安泰でないのなら、非正規はどうなのよと、損保に続いて都市銀行の働き方も聞きました。講師は、長年損保で管理職として働いていた方です。まずは損保から。

 

大手損保、A損保とB損保の資料から抜粋します。

A損保の正社員は全員総合職です。正社員の最大の特質は無期雇用ですが、その正社員は全域正社員と地域正社員に分かれます。呼称は企業によって多少違います。

B損保の男女比です。正社員は男女ほぼ同数ですが、全国転勤ありの総合職は圧倒的に男性の数が多く、B損保では男性約6000人に対し、女性は約200人です。反対に地域限定正社員(転勤がない)は、男性約60人に対し約9600人が女性です。一方、非正規労働者は、男性約100人に対し女性は約4200人です。A損保は男女別の数字がありませんでしたが、非正規労働者は全体で5300人と出ています。B損保の数字から推察すれば、ほぼ女性ということでしょう。

B損保の非正規労働者は月給制で、ここ23年で順次無期雇用にしているそうです。しかし、賃金は有期雇用のときと同じだそうです。人手不足の昨今ですから仕事に慣れた人材はできるだけ長く勤めて欲しい、けれど高い賃金は払いたくないというところでしょうか。A損保は有期のままで、一年更新です。

B損保が非正規を順次無期雇用に転換しているということは、仕事の上でどのような連鎖が起こっているのでしょうか。

講師は次のようにまとめられました。

従来なら一般職とされていた正社員をも総合職と位置づけている。総合職はさらに転勤ありの全域正社員(グローバル社員)と転勤なしの地域社員(エリア社員)に分かれている。このことは、一般職を総合職に格上げすることで、従来の「総合職」の仕事を一般職に肩代わりさせる結果となっている。さらに全域正社員には「あなたはグローバルだから」とより一層ハードな働かき方を求める結果を作っている。電通で新採用の高橋まつりさんが過労自殺しましたが、損保のグローバル社員に課せられるノルマを知る講師によれば「電通だけが特殊ではない」とのことです。

従来の一般職は総合職に位置づけられましたが、転勤ができない女性に担わされた事情を担保に、「転勤できないのだから」との理由で全域社員との賃金格差を正当化している結果になっている。

 

ここでもまた「転勤」という日本企業独特(欧米にも転勤あるが、男性&一部の女性正社員の誰でもが転勤の可能性がある日本とは根源的に違います。)の働き方が問題になってきます。

保険会社の社員が職場や家庭を訪問し、保険を勧める行為をするのは生命保険会社です。卒業生も何人かこの職に就いていましたが、圧倒的に女性で、生保レディと呼ばれています。多くは非正規です。損保で損害保険を勧めるのは、各地の保険代理店の仕事です。A損保やB損保の社員の仕事は、代理店に保険を売ることです。地方に精通しているのは地方支社の社員です。だから各地を転々と移動する転勤族は必要ないとの講師の言葉でした。

 

ショッキングな記事を紹介します。

@連合通信170624
≪AIは労働者を幸せにするのか/削減された有期社員≫
 昨年12月、富国生命保険相互会社(フコク生命)は、給付金などの支払い査定業務
にIBM社製のAIを導入し、業務処理負担を30%削減すると発表した。この一見地
味なニュースに、国内はもちろん、海外メディアも飛びついた。削減される対象が査
定部門 で働く労働者だったからだ。英国のBBC放送(WEB版)は「人間が機械に
よって仕事から追い払われる未来をSFは長い間想像してきたが、それが現実となっ
た」と報じた。
 フコク生命が同部門にAIを導入したのは今年1月。保険給付の請求時に契約者か
ら送られてくる診断書を自動で読み取り、病気、災害、手術などの記載をコード化し
ていくのがAIの仕事だ。同社の保険査定は1日500600件。1件の査定にこ
れまで12人が関わっていたが、AI導入後は6人での処理が可能になったという。そ
の結果、約130人いた査定担当者の25%にあたる34人の有期社員が削減された。
「今年3月末までに契約期間満了となる有期社員の代わりをどうするのかという議
論の中で、AI導入が出てきた。雇用削減ありきではない」と同社広報部は説明す
る。しかし、AI導入で見込まれる経費削減は決して小さくない。契約満了となった
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人の人件費は年間約1億4千万円。これに対し、AIは初期投資に約2億円が必要
だが年間経費は1,500万円程度だ。 同社では、契約者からの苦情分析・対応にも
AIを導入済み。今後は支払い査定の検証作業にもAI活用を広げる予定だ。もちろ
ん他の保険会社でも同様の動きが進む。ちなみにAIと雇用に関する英オックス
フォード大学の調査では、保険事務は最も代替率が高い仕事の一つ。AIによる自動
化率は99%と推計されている。「連合通信・隔日版」

私はずっと「同一(価値)労働同一賃金」をこのブログに書いてきました。賃金差を正当化するのに使われてきたのが「転勤」です。上記の記事のようなAIが導入されれば、転勤どころか同一労働同一賃金そのものの概念が問われます。

AIと生身の人間との「同一(価値)労働同一賃金」のための職務評価の4要件…責任、知識・技能、労働環境、負担…とは別の要件を考えなければ人間が不利になるかもしれません。
AIと根源的に異なる要素「それは転勤だ〜」なんてことに。

銀行編は次回に。

今日はここまで。