新年度になりました。卒業生のお子さんが志望高校に合格しました。学びたい学科で夢一杯。戻れるものなら、あなたは何歳からやり直したいですか?

若い方がいいけど、テストがない今もまあ悪くはないかな?


用事があって京都の某大学へ行きましたら、入学式でした。入学式の服装はリクルート服なのですね。知らなかったあー!二年半後にも着なければなりませんが、今日の入学式のように晴れやかな日に繋がることを切に願います。

 

記事を読んで、とっても奇妙な感じを受けました。

《特養の介護職員、医療行為の一部容認へ》

 厚生労働省は25日、新年度から、特別養護老人ホームで働く介護職員に、医療行為の一部を認めることを決めた。 今回、認められる医療行為は、口腔内のたんの吸引と、チューブで胃に流動食を送る「経管栄養」の準備と経過観察、片づけなど。~中略~医療行為は医師や、医師の指示を受けた看護師らにしか認められていない。だが高齢化に伴い、特養では医療処置が必要な入居者が増えている。~中略~全国に約6000か所ある特養で全面的に行うことにした。2010325 読売新聞)


何が奇妙って?「認めることを決めた」は「お願いすることにした」の間違いではないですか?机上で物事を決めている人は、「介護は誰でもが出来る」という発想だからこんな発表になるのです。生身の人間を相手の仕事がどれほどストレスが強く、しかしそれに見合わない賃金で。これ以上、命に関る仕事を増やすのを「認める」とは!

 

今回は卒業生の仕事紹介から離れます。

画期的な判決の場に行ってきました。正しくは、判決後の集会に参加しましたのですが…。前回の結審のときに傍聴席を譲ってもらったので、今回、傍聴は遠慮しました。随分と遠くから、東京とか山口とかから支援者が来られていました。


簡単にこの裁判の経緯を説明します。詳しくは「ファイトバックの会」で検索してください。

豊中市の女性センターの館長三井マリ子さんは60人の応募者の中から選ばれて非常勤の初代館長になりました。2000年春のことです。三井さんは次々と斬新で女性の立場に立った企画を実行していきます。2000年の首相は森喜朗氏。「神の国」発言の方です。(続きを読むに入れておきます)


この言葉から分かるように、日本はどんどん保守的な考え方の人の声が大きくなっていきました。勿論「ジェンダー」という言葉もバッシングを受けます。「ジェンダー」という言葉は学術用語なのですが、このような背景の下で福井県や東京都で「ジェンダー」を冠した書籍や講演会が排斥される事件も起こりました。「ジェンダー」を嫌う勢力は、男女の役割を固定する考えです。こういう流れの中で、三井さんは攻撃を受けます。特に豊中市会議員、ジェンダーという言葉・概念を忌み嫌う、一人が執拗に、「三井さんを辞めさせろ」と迫ります。

結局女性センターの幹部(豊中市からの出向)はそれに屈服して、三井さん排斥を画策します。そして、三井さんには内緒で、次の館長候補に「三井さんは辞めたがっている」と言い、寝屋川市の職員であったその女性を引抜きます。しかし、これでは明らかに計略がばれてしまいますから、表向きは試験をします。結果はもう言わなくても分かりますよね。


三井さんは裁判に訴えますが、大阪地裁は三井さんの訴えを認めませんでした。こんな理不尽なことがまかり通っているのに、裁判所は認めなかった。三井さんの悔しさは想像に余りあります。(
2009531日の「豊中男女参画センター「すってぷ」裁判とクオータ制」にも書いていますので、両方を読んでくださるとさらに詳しく経過が分かります。)


そして、
330日。控訴審の大阪高等裁判所の判決が出ました。不満もありますが、ほぼ三井さんの主張を認めました。「裁判はその中身ではなく、裁判官による」と考えた方がいいのだそうです。これから言えば今回の判決を出した裁判長は大ヒットと言えます。裁判長の名前は「塩月秀平」さんです。覚えておかねば!


宮地弁護士が三井さんの背中を押しました。三井さんが最初に相談した弁護士です。以下、宮地弁護士の話です。

 

雇用関係の裁判は難しい。勝算を考えれば、「裁判をやめなさい」という弁護士の方が多いかもしれない。しかし、三井さんは館長であるときも、それまでもいつも「不正義に立ち上がろう」と言ってきた人である。ここで三井さんが立ち上がらなければ、三井さんは今後自己を否定されたことをずっと引きずって生きていかなければならない。だからこの判決は、三井さんの尊厳を踏みにじったことに対する判決なのです。

 

ちょっと難しいのですが、宮地弁護士の解説を「続きを読む」に入れます。「続きを読む」に《人格権》が出ているのはそういう意味なのです。

では今日はここまで。

☆「神の国」発言

~前略〜日本の国、まさに天皇を中心としている神の国であるということを、国民のみなさんにしっかりと承知をしていただく、その思いでわれわれが活動して三十年になる。」。

 

☆宮地弁護士の解説

三井マリ子さんが、豊中市と豊中市の男女共同参画センター「すてっぷ」を運営する財団に対して、非常勤館長職を雇い止めされたこと、そして常勤館長職への採用を拒否されたことの違法性を主張して損害賠償請求をしていた裁判につき、大阪高裁の塩月秀平裁判長は、三井さん敗訴の一審判決を取消し、豊中市と財団に対して、連帯して金150万円と平成16225日以降年5分の割合による遅延損害金の支払いをするように命じました。


<この高裁判決の画期的な特徴は、以下のとおりです。>

1,行政が一部勢力の不当な圧力に屈したことを認定したこと

豊中市において、男女共同参画の推進政策を批判し、「すてっぷ」がジェンダー・フリーの拠点になっているなどとして攻撃する一部勢力(団体や議員)の攻撃にさらされてきたことを詳細に認定し、この勢力が「「すてっぷ」は三井カラーにそまっている」などと攻撃していたことも認定しています。

 

そして判決は、この一部勢力による攻撃によって、平成153月の市議会に上程が予定されていた男女共同参画推進条例が上程できなかったことから、同年9月の市議会では、市の面目をかけてその制定をはからねばならないとの思惑により、この一部勢力をなだめる必要にせまられ、男女共同参画推進の象徴的存在であり、その政策の遂行に顕著な成果を上げていた三井さんを財団から排除するのと引換えに、条例の議決を容認するとの合意を、この一部勢力との間でかわすに至っていたものとの疑いを完全に消し去ることができないと認定しています。

 

2,「すてっぷ」の組織変更を急いだのは三井さんを排除するためであることを認定したこと

 判決は、「本郷部長(豊中市の人権文化部長)や山本事務局長(財団の事務局長)らは, 本件推進条例が議決されるや,中断していた財団の組織変更の検討を急ぎ再開し,  「すてっぷ」の非常勤館長を廃し,プロパーによる常勤館長を置く (すなわち,三井さんを現館長につき雇止めとし, 新館長にも採用しないで,財団から排除する) という組織変更を行う意思を固め,また, この間,

山本事務局長が単なる世間話の中で,三井さんから「常勤による館長への就任は無理である」との片言を引き出したのに乗じ,本郷部長において,三井さんを外した新館長の候補者リストを作成し,組織変更及び候補者リストからの新館長の選任,及びこれに伴う予算措置について市長の内諾を得て,平成1521日に,財団の臨時理事会を開催させて同案を確定させた」と認定しています。

 

さらに判決は、「本郷部長,武井課長及び山本事務局長は,3人目又は4人目の候補者であった桂さん(寝屋川市の職員)に対し,桂さんが、三井さんにおいて新館長に就任する意思があるときは自らはその就任を固辞する意思を有していることを了知しながら,三井さんにはそのような意思はないと桂さんに告げて, 同年中に桂さんに就任の内諾をさせた上, 理事会の開催までの間に.桂さんを事実上,新館長に就任させようと企図したことを認定しています。

 

また判決は、「三井さんを館長として留任させようとする市民の動きがみられ, 同時に三井さんが新館長への就任の意思を表明するに至ったため,選考試験を実施することとなったこと, 」を認定しています。

 

そのうえで判決は「しかし,豊中市においては,三井さんが新館長に選考されれば, 一部勢力の勢いを止められないこととなって,さらなる攻撃を受けることが必定となるばかりか, 他方の候補者である桂さんについては,寝屋川市男女共同参画推進センターの事務局長を務めていたところを, 本郷部長らの強い要請により, 同市の了解のもとに,同職を辞任させて新館長に就任することを応諾させた経緯からして,同人を新館長にしないことには,同人や同市に対する背信行為となり,いずれにせよ,本郷部長のみならず,豊中市の市長も政治責任を問われかねないことを懸念し, 桂さんの新館長就任実現に向けて動いたものである」と認定しています。

 

3,三井さんに対する人格権の侵害と、豊中市の本郷部長と財団の山本事務局長の共同不法行為を認定したこと

 

判決は「このような動きの中での三井さんの立場をみると, 当時一部勢力による三井さんへの攻撃活動が繰り返されていた中で,三井さんが館長として継続して就任していられるかどうかは, 重大な関心事であったのは当然であり,上記攻撃活動が市や財団ら関係者に対してされている中ではなおさら,その関係者から,館長職の在り方や候補者いかんについてその都度説明を受けてしかるべき立場にあったというべきである。 」としています。

そして判決は、「財団の事務局長及び財団を設立し連携関係にある豊中市の人権文化部長が,

事務職にある立場あるいは中立的であるべき公務員の立場を超え, 三井さんに説明のないままに常勤館長職体制への移行に向けて動き,三井さんの考えとは異なる事実を新館長候補者に伝えて候補者となることを承諾させたのであるが, これらの動きは,三井さんを次期館長職には就かせないとの明確な意図をもってのものであったとしか評価せざるを得ないことにも鑑みると,

これらの動きにおける者たちの行為は, 現館長の地位にある三井さんの人格を侮辱したものというべきであって,三井さんの人格的利益を侵害するものとして, 不法行為を構成するものというへきである。」としています。

 

さらに判決は「本件雇用契約は年単位のものであるから,、三井さんとしては雇止めのリスクを覚悟すべきであったが,反面においてその実績から次年度も継続して雇用されるとの職務上の期待感も有していたものといえるのであり,雇用契約が年単位であるからといつて,常勤館長職制度への移行期において,その移行内容及び次期館長の候補者リストについて何らの説明, 相談を受けなかったことについては,現館長の職にある者としての人格権を侵害するものであったというべきである。」としています。

 

<この判決の問題点は以下のとおりです>

1,雇止め自体の違法性は認めなかったこと

 

私なりの解説:三井さんの雇用関係は公務員に準ずるものなので、民間企業の雇用関係は適用されず、非常勤で1年更新なのであるから、更新されず「雇止め」になったとしても違法ではない。弁護士は「女性センターは直接の市の職員が運営しているのはないから、公務員の雇用関係を適用するなら、全国にある外郭団体の雇用関係に波及して、問題のある解釈である」とのことです。

 

判決は「実質的に豊中市の行政の一部を担う部署に相当する財団における 「すてっぷ」 の館長職の雇用関係は,地方公共団体の職務を行う特別職の非常勤の公務員の地位に準ずるものと扱われるべきであり,三井さんと財団との雇用関係は,民事上の雇用関係の法理が適用されるよりも,豊中市の特別職の職員 (地方公務員法333号参照)の任免についての法理が準用されると解するのが相当である。 したがって, 「すてっぷ」館長としての三井さんの雇用について,

期限を定めたからといつて, これを違法ということはできず, また,雇用期間経過後の更新についても解雇の法理は適用されない」として、雇い止めには特段の合理的な理由は必要としないとしています。

 

2,採用拒否自体の違法性を認めなかったこと

私なりの解釈:三井さんを排除するもくろみで次期館長の内諾を事前に得ていたが、結果的に三井さんを採用しなかったのは選考委員会である。選考委員会の委員がこれらの事実を知っていたわけではない。弁護士は「選考委員会で、担当者が強く主張すれば、それを押しのける意見を述べる委員はまずいないだろう」

判決は、前記のとおり豊中市の本郷部長の一連の動きを違法と認定し、本郷部長が、新しく選任する常勤館長の選考委員会の委員に就任したこと自体、公正さを疑わしめるものがあるとしました。

しかし採用自体は、選考委員会によって決定されているところ、同委員会は5名の委員で構成されてて、これら5名の委員の判断において結論が出されていることから、「選考委員による選考及びその結果は,桂さんと接触して候補者としての内諾を得るなどした,同人の次期館長就任に向けての本郷部長などの動きを,

結果的に浄化したものと評価するのもやむを得ない。」としています(この部分の判旨は、わかりにくいです)。

 

以上のとおり、この高裁判決は、三井さんの立場を「非常勤の公務員の地位に準ずるもの」としたために、雇い止めの違法性を認定するまでには至りませんでしたが、実質的には、雇い止めに至る経過において、豊中市や財団担当者の行為に違法性があったことを認めて、慰謝料100万円弁護士費用50万円および遅延損害金の支払いを命じており、この点は画期的であると評価できると思います。

また豊中市におけるバックラッシュ勢力の動きを詳細に認定し、それに行政が屈していった経過を詳細に認定している点においても画期的だと思います。

 

「館長雇い止め バックラッシュ裁判」のサイト http://fightback.fem.jp/