限定正社員を知っていますか?
この限定正社員の解雇ルールについて、着々と規制緩和の方向で審議会が進められようとしています。

なぜ、今回が限定正社員なのかというと、卒業生の身に迫ってきた案件だからです。

卒業生(Aさん)から相談メールが来ました。Aさんは高校卒業後約20年間、この全国に支社のある会社で働いてきました。仕事と育児を両立させてきた、問題意識のある女性です。

最近、突然社長が『女性だけを(地域)限定正社員にするつもりだ』と宣言。

で、Aさんからの相談に対し、私が最初に問題だと思ったのは、「女性に限る」とした点です。「すぐに均等室に駆け込むべし」と言いました。均等法(改正男女雇用機会均等法)6条違反ではないかと思ったからです。

≪第6条≫

事業主は、次に掲げる事項について労働者の性別を理由として、差別的取り扱いをしてはならない

一 労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)、昇進、降格及び教育訓練

二 住宅資金の貸し付けその他これに準ずる福利厚生の措置であつて厚生労働省令で定めるもの

労働者の職種及び雇用形態の変更

四 退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新


これらは、≪ 降格、職種変更、雇用形態の変更、労働契約の更新も差別の対象になる≫という条文です。

Aさんのケースでさらにやっかいなのは、「女性限定」という点です。「あー良かった!男性は関係ない」と思った男性組合員は、女性のために社長に抗議するというような共同行動を取らないでしょう。女性の労働条件が悪くなれば、即男性にも及ぶのですが、取り敢えず目の前の障壁だけしか見えないのが、日々馬車馬の如く働いている労働者の悲しさ。先見の明を持ちたくも、思考力ゼロ状態なのですから。このケースの結論は、「会社の労働組合ではなく、まず労働弁護団に相談すべし」でした。労働弁護士によると、Aさんの社長の行為は、均等法、労基法、憲法の、違反の塊だそうです。

で、以前、ユニクロが地域限定正社員制度を編み出したとの記事があったことを思い出し、さっそく調べてみました。以下ユニクロのHPからの引用です。

地域限定正社員制度の運用開始に関するお知らせ

20070305

株式会社ユニクロは、20074月1日より「地域限定正社員制度」の運用を開始いたします。この制度はユニクロの店舗に勤務する非正社員である契約社員及び準社員を対象に、勤務地域を限定する正社員として、契約変更を進めるものです。

【導入の背景】

 現状、ユニクロの店舗で働く正社員は、全国を対象とした転勤を前提としておりました。そのため、優秀でありながら、制度上は正社員として雇用できなかった人材に活躍の場を作ることは、かねてよりの課題でありました。また、大型店を軸にした積極的な出店戦略を展開していく中で、人材の不足感は、今後より顕著になってくる事が予想され、人材の確保と育成の必要性も高まっておりました。

【制度の概要(限定正社員のみ抜粋)しました

(注1) 地域限定正社員が現行制度上の正社員と大きく異なる点は、転居を伴う転勤が発生 しないことです。そのため、地域に愛される店づくりの核となる有用な人材として、長期にわたり継続的に店舗運営に貢献していただくこととなります。」

【制度の狙い】

1.優秀な人材の成長促進と活用によるお客様満足の向上と、それにともなう業績の向上
2.優秀な人材。の長期・安定的雇用による店舗運営・経営の安定
3.社会的課題の解決(特に若年労働層の活性化など)への寄与


転勤がない

労働者に優しい、なかなか良い制度ではないですか!って思ったあなた、ここからが本番です。「続きを読む」に東京新聞の記事を引用します。で、この記事を引用しての私なりの解釈です。

まず、正社員と限定社員に違いです。

正社員:転勤がある。どんな仕事でもする。残業がある。無期雇用である。解雇するためには制約がある。


限定正社員
:転勤なし。労働時間に制約がある。無期雇用である。仕事の内容は限定されている。事業所や仕事がなくなったときに解雇される。


この太字の箇所が、いよいよルール化されるというのが、審議会の動きなのです。勿論、これは安倍内閣の三本の矢のひとつ、規制緩和の流れです。
で、卒業生Aさんに降りかかった「女性を限定正社員に!」という社長の一声は、結果的に次のような構図になって、Aさんを追い詰めるかもしれません。

女性たちを通える範囲の支社とか営業所とかに転勤させる。→その事業所を経営上の理由(なんでもOK)から閉鎖する。→解雇

今まで限定正社員という雇用形態を持っていなかった企業も、ルール化されて解雇が安易に出来るようになれば、Aさんの社長のような行動「うちの社も限定正社員の制度をつくろうっと」をとるでしょう。ますます、労働者は解雇されやすくなります。

で、この地域限定という働き方は、転勤が大きな要素としてあるが故の制度です。転勤はどこまで可能なのでしょうか?
私の場合は、,片道1時間半以内の通勤距離は、労使合意でした。滋賀県の公務員なので、県内の異動で済みました。おかげさまで最後の勤務校は徒歩圏内でした。配慮に感謝です。でも近いから、お正月2日から、勿論土日も、毎日遅くまで仕事をしていましたけど。当時は問題意識のない労働者でした。(反省!)

で、転勤というのはとても日本的な慣習なのではないかと思い、判例を調べてみました。海外の転勤状況はうまく検索にフィットしませんでしたが、以前聞いたとり読んだりした範囲においては、日本ほど常態化していないような記憶があります。その最大の理由は、欧米では日本と違って、就社するのではなく、就職するからです。日本の場合、女性ならば、事務職のままの人が大半ですが、男性は、事務もやれば営業もやるというように、会社の中のあらゆる仕事を経験するのが原則当たり前なのです。だから、転勤は起こりえます。しかし、就職なら、その仕事に就くことが条件なので、会社の全ての職務を経験するということは考えられません。

転勤は、人生を左右する事件です。妻(夫)も働いている、介護される高齢者がいる、看病される家族がいる、転校に伴う子どもの負担等を考慮すると、転勤ってそんなに効率的な働かせ方かな!って思います。

では、以下が転勤の判例です。
http://www.jil.go.jp/hanrei/conts/036.htm

「続きを読む」もよろしく。

では、今日はここまで。



 

「限定正社員」懸念の声 雇用多様化へ 規制改革会議が答申 201367日東京新聞

政府の規制改革会議は、一定の勤務地や職務、労働時間で働く「限定正社員」の雇用ルール作りを求める答申をまとめた。今秋から検討を始め、2014年度中に整備するよう求めている。事業所閉鎖や業務縮小などがあった場合、一般の正社員より解雇しやすくなる見込みで、労働問題に取り組む弁護士らからは、「理不尽な解雇の横行につながる」と懸念する声が上がる。(稲田雅文)

 「狙っているのは過剰労働力を解雇することだけ。限定正社員を突破口にして、従来の日本の解雇ルールを緩和しようとしている」

 日本労働弁護団が五月に東京都内で開いた「解雇規制の緩和に反対する集会」で、水口洋介弁護士は、限定正社員の導入の動きを批判した。

 答申をまとめたワーキンググループの議論では、半年や一年などで契約更新しながら働く、非正規労働者の雇用安定や、ワークライフバランスの改善、子育てを終えて再び働く女性らの活躍につながるとしている。一方、経営合理化などで契約時の勤務地や職務がなくなった場合は、解雇できるようなルール作りも狙う。

 判例で確立している現状の解雇ルールは、経営上の理由で解雇する場合、人員削減の必要性があるかや解雇を避ける努力をしたか、解雇する人の選定は合理的か、などを基準に解雇が有効かを判断する。企業側からはこのルールが厳しすぎるとして、緩和して労働者が成長産業へと転職しやすい制度にすべきだという意見が出されていた。

 水口弁護士は「議論されている限定正社員には、この解雇ルールは適用されない。例えば職務を照明器具組み立てと指定された場合、照明器具からは撤退するからと、解雇回避努力を尽くさなくても解雇できるようになる」と指摘する。

 さらに、ワーキンググループで議論された正社員の現状を「転勤や残業の命令に、無限定に応じなければならない働き方としている前提が誤っている。すべての労働者についてワークライフバランスと雇用保障が両立されるべきだ」とする。 「そもそも日本の解雇規制は厳しくない」と指摘するのは、大阪市立大の根本到教授(労働法)。根本教授によると、経済協力開発機構(OECD)が、三十カ国の解雇規制の強さを比較した調査では、日本は二十四番目。正規雇用の部分だけで見ても十八番目と、平均よりも規制が緩いという結果で、「解雇規制が厳しい」という議論の前提自体に疑問を投げかける。 限定正社員の導入は、「新たな格差を生み出す恐れを否定できない」とし、「成長産業へ労働者を移動させたいなら、解雇規制の緩和ではなく、成長産業の創出を進め、失業者への保護を徹底すべきだ」と語る。