いつもとりとめない私の感想を先に、本題は最後にちょっと、を反省し、今回は前回の続きから始めます。前回の課題は、職務給と職能給でした。
日本は、先進国の中では特殊な賃金体系で、所謂職能給です。

昨夜、非正規労働者の小さな集まりに参加しました。大阪府下のハローワークに9年間勤めていた非正規労働者が、例年のように雇用の更新があると信じるに足る上司の言動にもかかわらず解雇されました。現在その不当性を問うている裁判の原告を励ます会です。励ます話をしてくれたのは3人。
京都市女性センターウィングス京都の非常勤職員の伊藤真理子さん。ーこの方は、仕事の内容が正規と同じ、というよりも、彼女が就いていた相談業務は嘱託しかいない、言いかえれば、正規職員と相談者からは思われていたー伊藤さんは正規職員との賃金差を求めて裁判をされました。(詳細は、伊藤真理子さんと検索すれば出てきます)京都地裁、大阪高裁、最高裁全て伊藤さんが負けました、具体的に伊藤さんから仕事の内容の説明がありましたが、他の部署の正規職員と同じくらいの仕事内容でした。伊藤さんの裁判後、嘱託職員の給料は大幅に改善され、嘱託かから正職員になった人が現在課長の職にいるそうです。

2人目は大椿裕子さん、関西学院大学を雇い止めされた方です。大椿さんは、裁判ではなく労働審判の方法を選びました。大椿さんは「4年任期」の契約で雇用されていたので、裁判では即刻敗訴の可能性が高いと判断されたからです。(大椿さん、労働審判で検索してみてください)大椿さんは関西学院大学の障害のある学生支援コーディネーターの仕事をしていました。大椿さんはなぜ4年で雇用期間が切られるかに疑問を持ちます。当然ですよね、新たに入学する学生に4年の経験は生かされます。有期雇用20年というような人はざらにいます。20年もその仕事が続いているのであれば、その仕事は無期雇用ということですよね。大椿さんが解雇された後に、経験のない人が採用されたそうです。

3人目は神戸刑務所偽装請負国賠償裁判元原告の凪佳子さんです。凪さんは、刑務所内の受刑者のために、刑務所職員と相談しながら、炊事担当の受刑者と共に服役者の食事を作ってきました。しかし、凪さんは、業務請負契約を結んだ派遣元から刑務所に派遣されていたので、刑務所職員から指示や命令を受けない立場なのです。なぜなら、刑務所は凪さんの直接の雇用主ではないからです。大阪高裁は、一審の神戸地裁の判決を変更し、165万円の賠償を命じました。(たまには労働者勝つこともがあるのだぁー)これも検索すれば出てきます。凪さんの裁判の後、全国の刑務所は管理栄養士を直接雇用に切り替えました。

3人とも、思い出したくもない裁判での屈辱や悔しさはあるが、後に続く女性たちの力になれたのではないかと思っていると話されました。

特に、伊藤さんのケースは、今日のテーマである職能給と職務給に深く関係しています。

今、卒業生の何人かに協力して貰って「非正規労働者の実態調査」をしています。やはり、仕事の内容と賃金が釣り合っていないとの声が多いですね。

正規労働者と非正規である卒業生の仕事の価値についての質問に、漠然とではありますが、各自が点数を付けてくれました。正規を100点とすると、非正規である卒業生は100点とか、90点とか。ところが、賃金となると正規がいくら貰っているか分からないとの回答です。職場で、賃金の話をしないというのもありますが、非正規は時給で、正規は月給ということも要因の一つです。手当を除く「基本給を労働時間で割る」というのも時給の目安になりますが、正規労働者にはボーナスもあり、退職金もあります。また、非正規労働者には支給されない住居手当や家族手当、金銭には換算しにくい福利厚生費用も支給されています。非正規は時給と通勤費(これも時給に含まれている人もいます)しか支給されていませんから、正規の貰っている諸手当もやはり賃金の内と考えなければ、納得できないません。このように、仕事の価値は、正規と非正規で大ざっぱでも判断がつくのに比べて、正規労働者の賃金を時給換算するのはとても難しいのです。また、同じような仕事をしている正規にも、賃金に違いがあります。単に勤務年数が長いということだけが賃金に反映されている訳ではありません。
これが顕著に現れるのが、男女の賃金差です。ずっと書いています中国電力男女賃金差別事件の原告の長迫さんが典型的な例です。

なぜこのようなややこしいことが起こるかといえば、日本の賃金体系が年功賃金という職能給だからです。仕事の価値で賃金が決まるのではなく、職務を遂行する能力とか、意欲とか、努力とか、企業への忠誠心とか、目に見えない不確かなものを査定した結果が賃金に反映されるのです。これに対し、仕事の価値に基づく賃金体系を職務給といいます。

日本の企業に勤める大半の正規労働者は、入社後、営業からデスクワークまでいろんな分野の仕事を経験し、昇格・昇給していきます。EUの職務給の考えからすれば、これはあり得ません。EUやアメリカでは、エリートでない限り、営業から経理事務へといった部署替え、他の地方への転勤はありません。労働者は契約書にある以外のことはしないというのが原則です。日本では、最初に配属された例えば、経理課勤務の辞令が永久に続くとは、特に男性は思っていません。

もし、ある会社で、同じような労働条件で、経理の仕事よりも、営業の仕事の方が賃金が多いのなら、営業の職に就きたいと思う人は多いでしょう。これでは人事異動はできません。誰も安い賃金の職に就きたくないからです。転勤あり、いろんな部署への異動ありを可能にするには、職能給という年功賃金体系を取らざるを得ないのです。日本で、仕事の価値を計る職務評価制度が普及しない、抵抗が大きいのは、このような特殊な賃金体系があるからです。

では、職能給だったら、非正規労働者の仕事の価値と賃金をどのようにして計ればいいのでしょうか?
こんなに頑張って仕事しているのに、なんでこんなに賃金が低いの?卒業生の嘆きは解消されないままです。結局、比較し難い日本型賃金体系の中での、非正規労働者の賃金は、その人の仕事の価値で決まるのではなく、国の最低賃金の額で決まっているのが現状です。

ユニクロは、現在の30000人の非正規の内、16000人を限定正社員として採用すると発表しました。賃金は正社員の8割程度とか。これが一つの手掛かりになるかもしれません。まず、限定正社員と非正規の職務評価をする。職務評価は、負担、知識・技能、責任、労働環境の4つです。昨日非正規、今日から限定正社員。何が変わるのかを分析すれば、非正規の賃金の目安が計算できるかもしれません。ただし、あのユニクロです。限定正社員も非正規と同じくらいの賃金だとすると、また別の問題も生まれますが、この制度が動き出したら、賃金表を手に入れ、職務評価をやってみる価値はあると思います。
うまくいけば職務給の道筋が見えるかもしれません。

では、今日はここまで。