≪「残業代ゼロ」募る不安≫
新聞各社が連日報道しています。

労働時間ではなく、成果をベースに賃金を支払う。これにより、子育て中の女性が退社後仕事を家に持って帰って仕事ができるようになる。

よって、企業は子育て・介護世代を活用し易くなり、雇用が増える。

要約すると、これらが提案した産業競争力会議が言いたいことのようです。

本気でこんなメリットが労働者側にあると思っているのでしょうか?

「成果」という概念が私には分かりません。

民間企業では、誰でもが成果という達成目標を立てて働いているのでしょうか?

営業なら契約を成立するとか、製造現場なら目標の数の製品を仕上げるとか。

学校なら、落第生を出さないとか、有名大学に何人合格させたとか。落第生を出さない取り組みは、今の文科省なら成果とはカウントされないような気もしますが…。

「東京新聞」は東芝で研究者だった女性の裁判を報じています。

http://homepage2.nifty.com/tsbrousai/news20130705.html

http://tocana.jp/2014/03/post_3860_entry.html



彼女は、衆議院(参議院だったかも?)議員会館で行われた「女性の労働、均等法」の院内集会で私の前に座っていました。細くて、ずっとしんどそうでしたから、よく覚えています。彼女と同じく液晶画面の開発に携わっていた男性同僚が半年の間で2人自殺した職場でした。「今年の秋に新製品を売り出す」のような会社の目標に向かって、成果を出さねばならない職場だったようです。

一面の見出しにあるように、ここで問題なのは「残業代ゼロ」でしょうか?では、残業代が支払われれば労働者は何時間でも働いてもいいのだとも、記事は読めますよね。

1986年施行の均等法と同じ道を辿りそうです。それまでの女性保護法を撤廃、女性も男性並みに働けるようにしたのが均等法でした。その結果、現在、非正規労働者の2/3は女性です。男性並みに働けない女性は正社員の座から滑り落ちました。残った女性は、男性と同じ過労死に至る正社員の道を歩んでいます。

こういう見出しにするのではなく、「どこまで際限なく働かせる気だ!」「過労死も鬱もさらに増える!」のような見出しにしないと、本質がつかめませんよね。

毎度、私が比較の対象として引き合いに出すEUは、残業代については労使の問題だとして、政府は介入していません。日本より規制が緩いようにも見えますが、週労働時間はばっちりと規制していて、48時間が上限です。この48時間は、時間外、即ち残業時間を含めたものです。さらに、EU指令では、一日に付き最低連続11時間の休息期間を設けなければなりません。
医療費高騰し、社会保障の財源は危機的だから、応分の負担を…ということで日本の消費税が上がりました。安く長時間使える労働者、企業で病気が発症すれば、企業が責任を取るのではなく、税金で賄おうとする魂胆も透けて見えます。東芝の女性研究者の裁判は、原告が勝訴しましたが、この提言が法律になれば彼女は救われないことになります。



先日、「神風」というドキュメントを観ました。特攻作戦から生還した男性が、「私は大学生だったので、アメリカの物量を知っていた。そのアメリカと戦争をして勝てる訳ないと思っていたから、零戦の乗るのがとても怖かった」と証言していました。また、別な集まりで、80代の方が「日本はこの先どうなっていくのだろうか」と仰いました。私は年齢を重ねる毎に嘆きが深くなっています。私のような、特に専門の研究者でもない人間でも、安倍政権の目指す方向は間違っていると考えています。専門家、例えば上記の零戦に乗らねばならなかった大学生のような、既に労働問題に精通している人は、苦しいだろうなと想像します。
そして、ついにある研究者に言ってしまいました。「先生は何をされるおつもりですか」とね。

自分のことを棚に上げての不遜な言葉でした。でも、ちょっこと言いたい。その道の専門家、警鐘を今鳴らさずしていつ鳴らすお積りですか?

そうそう、女性労働の仲間のスウェーデン研究家が書いています。舞台は当然スウェーデンです。

減税を唱える現政権に対し、国民は減税分の一万円、例えばレストランで消費するよりも、集め合わせ、不遇な人に再分配することは、思わぬ事故や不幸、高齢により困る可能性のある自分に得だと思い始める。ままならぬ人生を背負う個人の安全保障を、国家という連帯の機能で納税を通して行ってきたスウェーデン人にとって、その機能がない国家は退場して頂きたい。(いこ★るvol39『スウェーデンを通して見る「くにのかたち」榊原裕美著』)

あらゆることが個人責任にされつつある日本に住む私には眩しいような考えです。

では今日はここまで。

今回は信楽MIHO美術館の枝垂れ桜です。
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