派遣法についてコメントを頂きました。頭では分かっていたつもりでしたが、「ずっと派遣」が可能になれば、失業したときの給付にも影響することに考えが至りませんでした。生涯派遣ならば、次のステップへ移るのは自己都合退職しかありません。自己都合退職なら雇用保険支給期間90日、会社都合なら180日です。左にあるコメントを読んでください。
さて、前回のブログでは、来年度予算の新聞記事からそのまま引用して終りました。日本の借金は1000兆円を超えています。
来年度予算の記事の『年金、介護、生活保護−生活に困難が生じたときの支えが社会保障だ。予算案では低所得者への手当てが軒並み削られる。年金給付を抑えるルールの発動や新法の施行も重なり、弱者にのしかかる。』が、労働者の生活にどのように影響するのかに私は注目しました。では、他の分野の予算も同じように減額されているのでしょうか?
ところが増額されている分野もあります。
それが防衛費です。
記事から一部引用します。

防衛費:過去最高に 南西諸島強化 来年度予算案

 政府の2015年度予算案の防衛関係費が、過去最高の約49800億円になる見通しとなった。 防衛関係費は02年度をピークに減少傾向が続いたが、第2次安倍政権発足後の13年度で11年ぶりに増加に転じた。防衛省関係者は「安全保障環境が厳しくなる中での予算減額は誤ったメッセージを周辺国に送りかねない」と増額理由を説明した。(毎日新聞 20150111日) 

将来に、日本の借金を少しでも少なくすることついては、国民誰もが異論のないところでしょう。予算配分をどのようにすれば、人々が安心して暮らせるようになるのか?来年度の予算を見ている限り、政府は社会保障費を減らしてもこれが可能だと考えているようです。

ギリシアの首相に、反緊縮政策を掲げる急進左派進歩連合のリーダー、弱冠40歳のチプラスさんが選ばれたと報じています。(2015.01.27)

(書きつつしょっちゅう中断するので、記事の日付はどんどん古くなります。)

ギリシアは、2009年に巨額の財政赤字隠しが発覚し、EUやIMF(国際通貨基金)から巨額の支援を受けてきた。しかし、緊縮策で景気が冷え込んだために、見込んだ税収は得られず、貧富の差が拡大する悪循環に陥っている(同日、朝日朝刊)

「借りたものは返さなあかん」と誰しも思いますが、どの分野を削減して返すかで全く異なった状況になった国の例があることを、前回も書いた「経済政策で人は死ぬか?」(デヴィッド・スタックラー&サンジェイ・バス著、橘明美・臼井美子訳、草思社)で知りましたので、興味深くギリシアの首相の選挙の記事を読みました。

まず、ギリシアに貸した国々(代表はドイツ)は、財政収支の改善、その中心は社会保護制度の削減を要求しました。
その結果、ギリシアはどうなったか?
・失業率の上昇、住宅差し押さえ件数の上昇、個人負債の増加等々。

次に、IMF(国際通貨基金)は、公衆衛生予算40%削減緊縮政策を要求しました。

で、ギリシアに何が起こったか?

・医療制度の改革と近代化の指示→処方薬支出の削減→病院は必要な医薬品・医療用品の調達ができなくなり、抗生物質などの基本品目まで不足する→購入が代金の支払いの滞った製薬会社がギリシアから撤退→5万人の糖尿病患者からインシュリンが奪われる。
・臨床医・医師・公衆衛生に携わる職員35000人を削減。
2007年から2009年にかけて自殺率24%上昇。(ギリシア正教では、自殺者は教会で埋葬してもらえないので、自殺の申告をしない人も多々あると想定される)
・「対策予算削減」による感染症の拡大→アテネ中心部でのHIV感染者の急増←注射針の使い回しによる感染→使用済みの注射針&注射器を減菌済みのものと無料交換する「注射針交換プログラム」予算削減により、麻薬患者一人当たり年間200本が、3本に削減。 

で、効果のほどはどうなったか?
ギリシアは巨額の資金援助を受け、大胆な緊縮プログラムを実施した。それにもかかわらず、2011年に入っても経済は回復の兆しさえ見せていない。

これをニューヨークタイムズ紙は、

IMFとECB(欧州中央銀行)はギリシアに資金を投入したが、その資金はギリシアを経由して、イギリス、フランス、アメリカ、ドイツの債権者に戻っただけ。つまり、ギリシア救済策というのは、公的資金でギリシアを救うのではなく、無謀な投資をして(ギリシアのバブルを煽る)、失敗した大手銀行を救うことでしかなかった。

なぜ、ギリシアは多大な痛みを伴う緊縮政策をしているにもかかわらず、回復しないのでしょうか?ここからが示唆に富む提言です。

それを著者は、「政府支出乗数」にあるとしています。IMFは、「政府支出乗数」を0.5と想定しています。一体、「政府支出乗数」とは何なのか?

調べましたが、微分もあって、わかりません。一応、定義は以下です。

政府支出乗数」とは?政府支出乗数とは、政府支出(G)の変化が国民所得(Y)に与える影響のことで、Y/Gで表されます(デルタは、変化分を表す記号です)。

著者は、膨大なデータを洗い直し、IMFの0.5は間違っていると警鐘を鳴らしました。IMFは、軍事費も医療費も同じように0.5としたのです。著者は、保健医療分野の投資は雇用を生み(看護師、医師、技師)、技術開発を促し(実験研究、イノベーション)、根本的な景気刺激策となりうると言ってます。。即ち、どの分野に重点的に支出するかで景気の回復度が違ってくるというのです。

最も景気回復に効果がある分野は保健医療の分野で、1以上の効果があります。それに比べて軍事費を増やしても、その経済的効果は0.5しかありません。だから、IMFの指示通りにしていたギリシアでは、支援のはずの救済策は、実際には雇用減少、消費低迷、投資低迷、信用失墜といった負のスパイラルを招き、その弊害が「健康危機」になって表れたということです。

成功したのはアイスランドです。
著者は、同じように経済危機に陥ったアイスランドを例に挙げます。アイスランドはIMFの強引な緊縮政策を拒否し、むしろ社会支出を増やしました。国が破綻するという未曾有の状況にありながら、保健医療費支出を20%増やしました。そしてアイスランドは見事に危機を乗り切りました。

要は、瀕死の病人から金を取り戻すには、まず健康になってもらい、その上で働いて借金を返してもらいなさいということです。「当たり前やんか」と素人の誰もが思いますが、この本の説得力のある点は、著者が、データを用いて分析した点にあります。いろんな例を挙げて読みやすい本になっています。私は、大津市立図書館で借りました。是非読んでみてください。
ここでは、医療を中心に紹介しましたが、同じように、経済を立て直そうとすれば、失業対策、住宅政策が重要だということをアメリカなどの国の例をあげて説いています。

ようやく結論です。
労働者の雇用を安定させ、人々が日々の生活ができてこそ、健全な財政状態が作れるのです。来年度予算は、経済政策の面からも間違っているということです。勿論、政府の目論んでいる労働政策も。
では今日はここまで。