ハローワークで相談員として働いていた非正規の女性が、契約更新されなかったのは、原告の任用更新に対する期待利益を違法に侵害し、これにより損害を被ったとして、慰謝料の支払いを求めて大阪地裁に提訴していた裁判の判決が、5月29日にありました。「原告の訴えを棄却する」と、たったこれだけの裁判長の言葉。その間3秒、大病院の診療時間だって3分間くらいはあるのに…。3年間の裁判でした。

判決文は「《職員の任免》74条に基づき、任用期間が経過し、任期満了により退職したというほかはないから、任用予定期間経過後に再び相談員として再任用しなかったからといって、直ちにその権利ないし法的利益が侵害されたとはいえない。」でした。

一年ごとの任用を繰り返し9年間働いていた原告。それまでの更新時に試験はありませんでした。なぜこの年だけ公募をしたのか?原告側は、原告がセクハラを受けた同僚から相談を受け、その同僚に弁護士を紹介したり、上司に直言したのが一因であると考えています。が、それ争点にすれば、「そんな意図はありません」と否定されるだけ。有能な原告に「よくやっていただいています」「資格も取られたらどうですか」と複数の上司が言った言葉は、次も更新があるだろうと期待を抱かせるに十分であったという点を問題にしました。こちらの方が、争点は原告個人のだけの問題ではなく、多くの非正規労働者の共通の争点だからです。そして、期待権を抱かせるに十分な証拠を出しました。が、原告の訴えはことごとく退けられました。

判決はまた「セクハラがあった年の次の年度は採用されているではないか。だからセクハラが原因ではなく、原告に能力がなかったからだ」とも言っています。同僚にセクハラをした上司は、処分を受けています。その報復を、同じ年度にするでしょうか?そんなことをすれば報復人事だとすぐにばれます。

ここで肝心なことは、非正規公務員は、上記判決文にある《任用満了で退職した》という文言で職を失うことです。原告は公募と称された試験を受けました。15分後には「更新なし」の結果が出ました。彼女の代わりに他の人が任用されました。正規職員なら、能力がなかったとしても簡単に解雇されることはありません。労働者は何よりも働く権利が尊重されなければいけませんから。そこには生存権がかかっています。原告に能力がないのなら、9年間も働き続けられていた訳がありません。なぜ毎年更新されていたのでしょうか?

非正規労働者は、使用者の思惑一つでどうにでもなるということこそ問題にはしなければなりません。公務の非正規労働者になぜ、正規職員と同じ「任用」という制度が適用されるのかこそが問題なのです。今や、公務労働に従事する非正規労働者は、公務員の半分を占めています。それだけ「仕事」があるということです。毎年毎年、非正規労働者が継続的な仕事をすることの方が問われなければなりません。

私も、41日に現職の先生から「講師に来てください」と依頼を受けました。もし受けていたら、私は「任用しますという辞令」を貰っていたはずです。授業を持つ前に、公務員が法的に守らなければならないこと、任用という言葉の意味、そんな研修を受けることはありません。即授業です。経験のある者ばかりでははありません。大学を卒業した人が即講師になる例は多々あります。どう考えても「任用」ではなく、「労働契約」の下で働くというのが妥当な考えでしょう。
国を相手に、地方自治体を相手に、公務に従事する非正規労働者が地位確認を求める裁判は、すべて敗訴です。それは公務員が労基法で守られる労働者ではないからです。この仕組みを変えない限り、もしくは、恒常的にある仕事には非正規ではなく、正規の公務員を充てない限り、労働者としての権利のない非正規公務員の問題は解決しません。多分、原告は大阪高裁に控訴するでしょう。誰かが声を挙げないと、誰も気づかないままの、大きな問題です。

ではきょうはここまで。