友人が亡くなりました。個人的なことですが、彼女の死を記録しておきたくてブログに書くことにしました。亡くなったのは、このブログに何回か登場してもらった、名古屋銀行で正行員になるためにパート労働法が改正されたときに団交をし、女性ユニオン名古屋の創設者であり、既存の組織に頼ることなく、非正規で働く女性たちを束ねていく運動のリーダーであった坂喜代子さんです。2017年1月25日朝6時に逝ってしまわれました。2007.06.202007.07.01007.07.30のブログに坂さんの記事があります。2012年の夏に身体に異変を覚え、その1か月後の私の携帯に、「異変のあった前日に大学病院の団体交渉を3時間やり、労働相談や裁判の傍聴を前々日にやったりと忙しくしていた」というメールが残っています。

 

今回も同一労働同一賃金についてです。

前回は経団連の出した≪同一労働同一賃金の実現に向けて≫に示された「企業に説明責任がない」ことでした。今回は20161220日に出た≪同一労働同一賃金ガイドライン案≫(以下、政府案)に示された「基本給」についてです。ガイドラインでは以下のように記載されています。

(1)基本給

 ヾ靄楜襪砲弔い董∀働者の職業経験・能力に応じて支給しようとする場合、無期雇用フルタイム労働者と同一の職業経験・能力を蓄積している有期雇用労働者又はパートタイム労働者には、職業経験・能力に応じた部分につき、同一の支給をしなければならない。また、蓄積している職業経験・能力に一定の違いがある場合においては、その相違に応じた支給をしなければならない。

 

問題点は基本給の中身です。

基本給を、職業経験・能力と明記していますが、「職業経験・能力に応じて支給しようとする場合」とあり、他の支給要素もあるかのような書き方です。パート労働者にとって、同一労働同一賃金であるかどうかを判断する最も重要な要素は職務給の概念です。ILOの「職務評価」は職務給が基本です。しかし、経団連は「日本の雇用慣行に職務給はなじまない」と主張しています。経団連の意向を汲むなら「職業経験・能力に応じて支給する場合」とするべきで、「しようとする場合」の文言は不要です。ILOからの勧告を完全に無視していないような、抜け道を上手に作っておく文のように思えます。


職業経験の文言は、パート労働者の賃金を質す場合に使えるかもしれません。同じ職場でずっと同じ年月、同じ仕事をしていたパート労働者はいる可能性はあります。これは使える文言なので覚えておきましょう。

ところが、問題なのは「能力に応じて」の文言です。能力は誰が測るのでしょうか?どういう方法で測るのでしょうか?

 

さらに、ガイドラインには、上記ヾ靄楜襪猟蟲舛砲弔い討硫鮗瓩続きます。

注)無期雇用フルタイム労働者と有期雇用労働者又はパートタイム労働者の間に基本給や各種手当といった賃金に差がある場合において、その要因として無期雇用フルタイム労働者と有期雇用労働者又はパートタイム労働者の賃金の決定基準・ルールの違いがあるときは、「無期雇用フルタイム労働者と有期雇用労働者又はパートタイム労働者は将来の役割期待が異なるため、賃金の決定基準・ルールが異なる」という主観的・抽象的説明では足りず、賃金の決定基準・ルールの違いについて、職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の客観的・具体的な実態に照らして不合理なものであってはならない。

 

従来、使用者の説明の中心は「無期雇用フルタイム労働者(世間でいう正社員)は転勤があるから」でした。これは主観的・抽象的ではなく具体的な説明です。しかし、これだけではなく「賃金の決定基準・ルールの違いについて、職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の客観的・具体的な実態」とありますから、この≪注≫を素直に解釈すれば、使用者が具体的な説明義務を負うようにも取れます。しかし、あくまで注なので、具体的にどのような文言になるか、経団連の猛反撃も予想されます。

 

前回の記事について、由太郎さんからコメントを頂いています。政府案には、勿論「派遣労働者」のことについても書いてあります。最後ですけど。

3.派遣労働者

派遣元事業者は、派遣先の労働者と職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情が同一である派遣労働者に対し、その派遣先の労働者と同一の賃金の支給、福利厚生、教育訓練の実施をしなければならない。また、職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情に一定の違いがある場合において、その相違に応じた賃金の支給、福利厚生、教育訓練の実施をしなければならない。

 

賃金の支給に関して、派遣労働者は「職務内容」、パート労働者は「職業経験、能力」とあります。では派遣労働者には職務評価が使えるかもしれない。しかし、「職務内容・配置の変更範囲」の文言が続きます。「職務内容」と「職務内容・配置の変更範囲」の双方を満たすことが条件なら、まずこれで派遣労働者の救済は不可能です。
さらに派遣労働者は派遣元に雇用されていて、派遣先で仕事をしています。派遣元は中間マージンを取っていまから、仮に派遣先と同じとされた派遣労働者には、派遣先は派遣元に中間マージンを含んだ費用を支払わなければなりません。「ならば、派遣労働者を直接雇用します」となるでしょうか?「何ら痛みを感じることなく解雇できる都合のいい派遣労働者」のままで働いてもらうために、使用者は「職務内容・配置の変更範囲」を持ち出すでしょう。また職務内容だから
ILOの職務評価とはならず、厚労省≪要素別点数法による職務評価の実施ガイドライン≫を使うというでしょう。これについては2013.02.01のブログを見てください。
昨日27日の第12回「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」で、委員の水町勇一郎さん(東京大学社会科学研究所)は、次のように述べています。

ここでより重要なのは、労働者の待遇について制度の設計と運用をしている使用者に、待遇差についての労働者への説明義務を課し、労働者と使用者の間の情報の偏りをなくすことである。

 

水町さんの意見が反映されたものになるのか、今後政府がどんな法律を作るのか、注視していきます。

26日にこの虹を、写真とは対岸のびわ湖ホール前から見ました。鳥は飛んでいませんでしたが.
今日はここまで。
京都新聞2017.02.06から拝借しました。

20170206203733niji1000